第54話 温泉回(4)
翌朝
寝起きでボケーっとしているはじめと、ケロっとしている国立さん。
あとは…。
「おはようございます和也様。本日もよろしくお願いいたします。」
仕事スタイルの神田さん。
いやいや…ギャップありすぎだよ!?
それもあるしあれだけ飲んで、全員二日酔いにならないのか…。
「あ…あぁ…おはようございます。」
「ご気分がすぐれないんですか?」
首を傾げながらこちらを心配する神田さん。
うーん…昨日のこと覚えてないのだろうか…。
「ちなみになんですが…お酒を飲んだ後のことって覚えてますか?」
「すみません…お恥ずかしい話なんですがお酒を飲むと途中で記憶をなくしてしまうんです。最近はセーブしていたのですが昨日はつい羽目を外してしまって…ご迷惑をかけてしまいましたか?」
「えっ、そんなわけないじゃないですか!なぁ大丈夫だったよな?」
ブンブン首を横に振る…しかできない。
知らない、覚えてないなら何も触れないほうが良い。
国立さんに目配せするとうんうんと首を縦に振っている。
昨日の夜のことは俺と国立さんの心の奥底に沈め、墓場まで秘めておくことにしよう。
「今日だけど、朝食を食べた後、軽く観光して帰ろうと思うんだが…はじめ?…二日酔いとか大丈夫か?昨日結構飲んでたが…」
ビクッと肩を震わせ、あわあわと口を動かせるはじめ。
「ぱぱぱ…パイセンは私をそんな軟弱だって思ってるっすか…だ、だーいじょうぶっす!!」
にやにや顔を浮かべてはじめを見る国立さん、変わり身が早いな!?
「ん?どうした?」
目を泳がせるはじめ、どうにもよくわからないが顔を赤らめている。
「顔が赤いぞ?熱でもあるのか?」
少し心配になったので、はじめの額に手を当ててみた――
んー…まあこの感じは…うん、平熱だな。
「ななんあなあー!何をやってるっすか!大丈夫に決まってるっす!ほらほらもう行くっすよー!!」
ぎゃーっと叫び、俺と距離を取ったはじめは、その後も率先して朝食会場に歩いていく。
俺、何かしたか?
「いやー眼福ですねー。今後の職場がたのし…」
「くにやーん!ほらほらー行くっすよぉー!!!」
先を歩いていたはじめがクイックターン。
俺に背を向け、国立さんの前に仁王立ちすると、上機嫌だった国立さんの表情がみるみる恐怖の色に染まっていく。
一体何があったというのだろうか…。
その後、国立さんに有無を言わせないまま、はじめは朝食会場へ引きずっていった。
「あらあら…若いっていいですね。」
「神田さんも十分若いと思いますよ?」
「そうですか?それは…恋愛対象としてみてくれたりしますか?」
「ふぇっ!?」
ふふっと俺の反応を見て笑いながら二人の後に続いて歩いていく神田さん。
「…冗談ですよ。」
あぁ…まあ…まだ業務前の時間帯だしね。
冗談キツイです。
さて、今日の予定を考えていたが、個人的には食べ歩きしたいなーって気分がある。
箱根といえば、駅の周辺で様々な種類の温泉饅頭を楽しんだり、最近人気の出てきた甘味処を楽しんだりと甘味ロードを楽しむこともできるんだが…。
この旅行においては、やっぱり練り物をメインに食べ歩きたいと思っている。
甘味の店舗よりは少ないが、所々で串に刺した練り物や焼いた海産物を売っている店が存在していて、食べ歩きながら地ビールを楽しめるようになっているのだ。
そんな妄想をしながら、朝食会場に来てみれば、朝食はバイキング形式になっていた。
ライブキッチンで作りたてのオムレツや、一口ステーキが提供されたり、山の幸、海の幸が様々な調理方法で魅力的に変化した数々の料理、お昼に向けて抑えめにしようと思っていたのだが…気付いたらお腹いっぱい食べてしまった。
「さて…朝食をたらふく食べた後に言う話ではないんだけど…、今日は食べ歩きしたいと思っているんだ。」
「パイセン…朝食食べた後っすよ。しかも皆お腹いっぱい食べた後っすよ。」
「私も流石に…すぐに食べ歩きはできないと思います。」
ですよねー…。
はじめも落ち着きを取り戻したようだった。
言い出しっぺもすでにもう満足してるから…このまま解散もそれはそれでありのような気がしてきた。
「朝食を食べた後なので、少しレジャー施設で身体を動かして、それから考えてみても良いのではないでしょうか?」
そんな一行に対し、神田さんはどこからともなくタブレットを取り出すと、箱根湯本辺りで遊べそうな場所をピックアップして表示してくれた。
神田さんが出してくれた一覧をみんなで眺める。
箱根湯本からシャトルバスで数分のところにある、自然のアスレチックが楽しめる施設が面白そうという意見がでたので、場所を移動してひと時を楽しむことにした。
俺以外は運動は苦手と言っていたものの、苦手ながらに遊べるような設備も多く、ひと汗かいていい気分転換になった。
特にジップスライドは爽快感があって、ダンジョン探索とは違った快感を感じることができた。
ひとしきり遊んだあと箱根湯本に戻ってくると、時刻は昼の時間を過ぎていた。
身体を動かしたこともあり、皆もほど良くお腹が空いてきているようだった。
さぁ…食べ歩きの時間だ!
練り物と箱根ビールの食べ歩きセットを購入して皆で乾杯。
神田さんは業務時間ということもあって、食べ歩きセット(ノンアルコール)だ。
酒の肴がなくなれば近くのお店でつまみを補充しつつ、最終日の箱根旅行を満喫するのであった。
―――――――――――
旅行編はこれでおしまいです。
高尾・はじめ問題を解消させたいと思ってましたが…無事一歩前進したようですね。
色恋模様は…またいつか!
箱根湯本付近での食べ歩きも十分にいいんですけど、少し足を延ばした風祭駅に、かまぼこの里ってのがあるんです。
ビール&かまぼこを食べることができて満足度高いですよ!
「★★★」や「ブクマ」いつもありがとうございます!
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