第53話 温泉回(3)
色々買ってきていた酒のつまみやお酒をマジックバックから取り出して二次会の開催だ。
ただ…正直、夕食の場でも結構ちゃんぽんしながら飲んでいたのでみんな飲みすぎてないか気になっている。
「えっ?私ですか?私は全然飲めますよー。」
国立さんは飲み始めてから全く見た目に変化がない。
受け答えも普通で…めっちゃ強くない!?
今も笑顔を浮かべながら、ビールをごくごく飲んでいる。
「和也さんはー彼女はーいるんですかー?」
神田さんが話し掛けてくるが…色々砕けているように感じる。
「えっ…と、彼女はいないですが…」
「えーほんとですかーなんでいないんですかー。引く手数多じゃないんでーすーかー?」
「神田さんも知ってるでしょ。SSランクになってから仕事一筋で、そんな暇ないですよ。」
肩を掴まれて、神田さん側にグイっと寄せられる。
「えー、そんな感じなんですかー?そんなんでいいんですかー!」
ドンッと一升瓶を机に叩きつける。
よくよく見ると用意していた日本酒の一升瓶が半分に減っている、どうやらこの量のお酒を一人で飲んでしまったようだ。
案の定というか…目が据わっている。
「いやーどうにかしないといけないかなーって考えてはいるんですけどね…」
無難な回答をしつつも、神田さんは…お酒を飲ませたらダメな奴だーっと頭の中でやらかしたーっと反芻する。
ずっしりとした重みが肩に載る、その感覚を意識しないようにするも…メッチャ顔が近い、あぁ…こんな状況なのに酒の臭いしかしない。
残念美女の神田さんが俺の中で爆誕した。
この人にはお酒は二度と飲ませない…。
ちなみにだが、下層の湧き水は疲れを軽く癒せても、ここまで泥酔した状態を回復させる効果はない…。
どうしたものか――
「私の話を聞いてるのかー!」
先ほどから飲んでた一升瓶を口に突っ込まれる。
流し込まれる酒酒酒…。
これにはたまらずゲホッとむせつつ瓶を口から引っこ抜く、その勢いから神田さんの拘束が緩んだ。
その隙を見逃さず、無理くり抜け出した。
色々なところを触れたかもしれないが…それどころじゃない。
「はははーのむぞー!」
俺がいなくなったことを気にする様子もなく、一人飲みを再開した神田さん。
こちらを見ていた国立さんも顔を青ざめて…あっちに近づいてはいけないと部屋の隅に移動していた。
自分の身は…自分で守ってね!
そういえば…高尾はどこに…?
「パイセーン!飲みましょーっす!」
タイミングよく背後からズイッと出てくる高尾。
「ああ…いいぞ、ほら国立さんも隅っこじゃなくてこっちにきて飲もうよ。」
浴衣をはだけさせた神田さんは一升瓶を抱いて深い眠りに落ちていた。
もう…そっとしておこう。
「あっ、はい。そっちに行きます。」
テーブルにつまみを広げて、あたらめてビールで乾杯。
「いやー…今日は楽しかったな!」
「あの
「あ…あはは…私久々に旅行したので楽しかったですよ!」
今日の旅行の感想から、何気ない雑談に発展していると結構酒を飲みすぎてしまい。
机の上がビールの缶や、ワインのボトルで埋め尽くされている。
「配信中はーはじめって呼んでくれるじゃないっすかー!」
酔いも回ってきたのか、俺の隣に移動して急に仕事の話を振ってくる高尾。
「それは…流石に配信中に高尾って呼ぶわけにはいかんだろ」
ここにいるメンバーは酔いすぎると絡み酒になるのだろうか?
顔を赤らめる高尾、俺は思っていることをそのまま返した。
「じゃあっすよー!配信時とそれ以外ではじめと高尾って使い分けるのって大変じゃないっすか?」
「んー?まあ確かに言われてみればそうかもしれないが…」
確かに面倒ではあるが…特に困ったこともないし…一体それがどうしたというんだ?
「パイセン…」
「ん?」
「私のこと…はじめって呼んで欲しいっす。」
普段見たことのない表情を浮かべ、こちらをうるんだ瞳で見つめてくる高尾。
幼さは残るが、からかったりしてくる時にチラリとのぞかせる八重歯がチャームポイントでキレイというよりは可愛らしい。
神田さんと比べるとあれだが、俺より一回り小さい身長と比べてボリュームのあるそれの存在感。
うーん、考えてみるとかなりかわいい部類に入るのではないだろうか。
仕事の後輩として接し続けて、女としてまったく意識していなかったこともあったので、突然の変化球に心の蔵がドギマギしてしまう。
いや…これも酔っぱらっているだけ…だよな?
机を挟んで国立さんが、キャーッって表情を浮かべて焼きするめ片手にビールをぐびぐび飲んでいる。
他人事だと思って…他人事なんだろうけどさ!
ってかマジで顔色一つ変わらないな!
「えーっと、高尾は…」
「はじめっす」
真剣なまなざしを向ける高尾、天を仰ぐ俺。
酔っぱらっているから…なんだよな!
明日になったら忘れているんだよ…な?そうだよな…。
「あーもう!はじめ…これでいいか?」
「はいっす。パイセン…ありがとうっす。」
太陽のような笑顔を向けるはじめ、俺の回答に満足したのかそのままぐーっと寝息を立て始めた。
なんというか…疲れた。
―――――――――――
あぁあああああー…表現力!!
「★★★」や「ブクマ」いつもありがとうございます!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます