第52話 温泉回(2)
「結構いい値段の旅館だと思うんですが、神田さんは旅館の費用は大丈夫なんですか?」
自分たちは会社の経費だから気にはしていないが、神田さんはどうなんだろうと思い食事が運ばれるまでの間に聞いてみた。
「それについてはですね。専属サポーターは探索者の方が旅行に出かける際、有事に備えて近くで待機する必要があるんです。そのためこれらに掛かる費用はすべてギルド持ちになるので気にしないでください。」
それはそれで結構ブラック感があるようにも感じるが…出張と同じ感覚なんだろうか?
「俺たちは旅行感覚だけど、神田さんは仕事で来ていたら、周りが遊んでて結構辛くないですか?」
「その点もお気になさらず、業務時間は普段の仕事と変わりないですし、定時以降は自由にしてもよいので温泉に入ってその後は…こうして私の意志でご飯をご一緒させてもらうこともできるので私としてはうれしいです。ただ…業務時間外なので普段とちょっと接し方が変わるかもしれないですね。」
ふふっと笑顔を向けてくる神田さん。
普段とのギャップがありすぎるよ。
普段がキリっとした感じだとすれば、すこし砕けたその仕草…。
大人の色香というのだろうか、うーん…これはイケない。
「パイセン…ちょっと神田さんを見すぎじゃないっすかね?」
「ど、どうした高尾」
ジロリとこちらを見る高尾、ちょっと怖すぎじゃないですかね?
「あー…もういいっす!酒っす!この旅館で一番高い酒持ってくるっす!!もちろんパイセン持ちっすよ…い・い・っす・ね!あと…皆最初はビールでいいっすか?」
グイっと顔を寄せる高尾、隣に座ってるからって近い近い…。
「いい!あと飲み物は自由に頼んでいいよ!国立さんも神田さんも自由に頼んでくださいね。」
「あら?私も良いんですか?」
「日々お世話になってますし、気にしないでください。」
神田さんと話していると、むーっと唸りながら「店員さーん!!」と高尾が叫び、「ビール人数分とこの店で一番高い日本酒を持ってくるっすよー!冷で!おちょこは全員分で!」と注文していた。
宣言通りで容赦ないな!?…まあいいけど。
「「「「かんぱーい(っす)!」」」」
料理とビールが席に届けられたので乾杯し、先付けと前菜を食べていく。
山の幸が上品に盛られ特製ソースが掛かった小皿、車海老の煮凝りに湯葉、ほかにも一口サイズの料理が複数用意されている。
どれもこれも手が込んでいてうまい!旅館で食べるご飯はなんでこううまいのか…。
しっかり噛みしめて最後にビールを飲む。
「さいこーっす!」
「美味しいです!」
吸い物もしっかりだしを取っていて、味付けは薄めだが味わい深い。
お造りは3種の魚が盛られていた。
一切れにわさびを少しのせ醤油を少し付けて食べる。
うん、プリッとした食感で美味しい。
おちょこに注いでもらった日本酒をグビッっと、米のほのかな甘みとキレを感じつつ、華やかな後味が鼻から抜けてスーッと消える。
あーこれぐいぐいイケるやるだ。
機嫌を悪そうにしていた高尾も上機嫌でご飯を食べてはお酒を飲んでいる。
そろそろメイン料理かな?と思ったので、皆に赤ワインが飲めるか確認した後、ボトルを注文し人数分のグラスを貰うことにした。
それと共にメイン料理が運ばれてくると同タイミングで、ボトルワインを運んでくれたソムリエが全員のグラスにワインを注いでくれた。
伊勢海老のオーブン焼きと、アークティックボアと野菜の陶板焼、陶板焼はオーブン焼きを食べ終えたタイミングで固形燃料に火を入れてくれるらしい。
「伊勢海老はぷりっぷりでめっちゃうまいっすー!」
「バターとニンニクが良い感じにマッチしてますねー赤ワインが合います!」
「海老味噌も濃厚で、身と一緒に食べるとおいしいです。」
3人の食レポを聞くと俺の食レポは不要だなと思いながら一口、外はしっかり焼き目がついて海老の風味を感じつつ、中はほど良くレアな身はプリッとした食感が残っていて旨い。
海老味噌の濃厚な味とニンニクがバターで混ざり合い、相乗効果を生み出している。
ビールや赤ワインがとても合う味付けだ。
お次のアークティックボアは極寒の地に生息する豚型のBランクモンスターで、氷山型の下層ダンジョンで遭遇する。
極寒の地ということもあり、赤身肉でもしっかりさしが入っているのが特徴だ。
陶板で焼きながらほど良く油の落ちたお肉は口に入れると、入れた瞬間に溶けて消える。
口の中にはしっかりとした肉の余韻が残るので、その後に飲むお酒がめちゃくちゃ美味しい。
くー…ここにして正解だったな。
みんなも幸せな表情を浮かべている。
一通りの食事を終えて、締めのデザートを食べて満足した一行
これで解散かと思いきや…
部屋飲みをしようということになり、俺の部屋で部屋飲みが行われることになった。
―――――――――――
お酒のちゃんぽんって酔いますよね!
「★★★」や「ブクマ」いつもありがとうございます!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます