第51話 温泉回(1)

さて…やってきましたー!避暑地箱根!

電車で1時間ぐらいで来れるので、都会の荒波にもまれた社会人にとってオアシス的な存在だ。

といっても、休日に来ると人で溢れかえっているので体休まるのは旅館のみになってしまうのが観光地としての宿命であり欠点だ。


残暑も落ち着いてきたこともあり、避暑地は若干肌寒い。

薄手の長袖を着ていればいくらでも調整できるので、快適ともいえるだろう。


従業員の皆と箱根湯本駅で合流した後、皆の荷物をマジックバックに詰め込み、大涌谷おおわくだにへと向かうことにする。


バス移動もいいけど、せっかくなのでケーブルカー&ロープウェイでのんびり旅行だ。

箱根登山鉄道に乗車して「強羅駅」へと向かい、箱根登山ケーブルカーに乗り換えて「早雲山駅」へ、最後に箱根ロープウェイに乗車し「大涌谷駅」で下車、休日だとケーブルカーもロープウェイもめちゃくちゃ並ぶのでマジでヤバい。


平日でも、そこそこ待つことがあるので、ゆとりを持って行動するか早めに行く必要がある。


急な斜面を登るためのスイッチバックを堪能したり、沸き立つ湯釜や白煙を上げる噴気孔を上から眺めるロープウェイ

あれよあれよと移動していたら大涌谷に到着していた。


「来たっすよー大涌谷ー!!来てみたかったんっすよー!黒たまご、箱根ビール!待ってるっすよー!!」

「実は私も初めてなんです大涌谷。なかなか行く機会ってないですよね…」

はしゃぐ高尾に、キラキラした瞳を浮かべる国立さん。


「いくっすよーくにやん!支払いは…もちろんパイセンっすよね!よろしくっす!」

「ははは…今日ぐらいはいいだろう!今日は経費で落とせないものは全部俺が出す!好きなだけ食べて飲むぞー!!」

「えええ…いいんでしょうか?」

「いいんっすよ!パイセンあざーっす!」

「高尾が言うな。国立さんもこういう日は気にせず遠慮しなくていいからね!」

「は、はい!ではお言葉に甘えます!」

近くても遠い距離、避暑地とは縁が遠いブラック企業勤めだったわけで…解放感に自然とテンションが上がる。

少ない出費でみんな楽しめるなら…気にせずガンガン使うぞー!!!



朝早くから来たこともあり、朝食を食べてないとのことだったので喫茶店で黒カレーパンやぶた黒ドックを頼んでみんなで小腹を満たす。

俺はカレーパンを食べたが、黒い衣はカリっと軽い食感、中はとろーり黒いカレーで万人受けする甘辛さ…うまい!

大満足の朝食を済ませた。


お次は箱根ビールに黒たまご。

まずは黒たまご、ほんのりと硫黄の香りが鼻を抜ける、黒い殻を剥くと見た目は普通のゆで卵だが周りの空気と香り、何もつけずに一口…旨みが凝縮しているように感じる。

付属の塩を振りかけたら、もうそれだけで酒の肴だ。

「くーっ!うまいっす!」

「ゆで卵でも味の感じ方が全然違うんですね。おいしいです。」

皆で黒たまごをペロリと食べ終え、ビールを飲み終えた。

ゆで卵って酒の肴になるんだねー。


大涌谷で少し観光した後は、旅館で食べる大涌谷限定のお菓子を買い、強羅に戻ってきてからはお昼ご飯を食べてしばらく観光を楽しんだ。


そして…宿到着ー!!!


各自、部屋に荷物を置いたあとは、夕食まで自由時間。

高尾と国立さんはワイワイしながら部屋に入っていった。

それを見届けて…俺も部屋に入る。



さて…ここから夕食までは自由時間だ。

いいか、ここからは温泉に入る前の儀式を行う。

まずはお湯を沸かして備え付けのお茶を用意する。

部屋着に着替えて、座椅子に腰かけたあとは、部屋に置かれたお菓子を食べてお茶を飲みつつ気持ちを落ち着ける。

観光でほどよく疲れた身体には甘いものが染みわたる。


旅館に来たことを実感した後は…誰が何を言おうがまずは温泉だ。

マジックバックは金庫に預けて、着替えのみ持って足早に大浴場へ向かった。



たっぷり…ほんとたっぷりの時間を温泉に浸かり、日頃の疲れを湯に溶かしきった。

人生には酒と温泉が必要だ。


部屋に戻り、夜風に当たる。

肌寒い空気が、温泉で火照った身体を冷ましてくれる。

心地よさを感じつつも、温泉とは程遠い生活を送りすぎていたからか、その反動がモロにでる。


毎日温泉に入りたい…。

いつか自宅に温泉を引けるところに一軒家を買うのもありだなと妄想にふけっていたら、晩御飯の時間になっていた。


部屋を出たところで、浴衣姿の高尾に国立さん…と…。

「んっ?なんで神田さんがいるんですか!?」


なぜか、浴衣姿の神田さんもそこにいた。


「はい、2日ほど完全休暇して温泉旅行を楽しまれるという話をお聞きしたので、何かあった際、和也様の専属サポーターとしてサポートさせていただく、先ほどこちらに来ました。もしよろしければ、ご夕食をご一緒にできればと思ったんですが…ご迷惑でしょうか?」

上目遣いにこちらを見る神田さん。

風呂上りということもあり、ポニーテールを解いたサラサラのロングヘアを手で書き上げる。

ふわりと香る華やかな香り、普段の雰囲気と違って色気120%、浴衣から覗かせる…こんなの…こんなの断れるわけないじゃないか!!!


「ご迷惑だなんて…ダイジョウブです…よぉ!?」

「パイセン…鼻の下伸びてるっすよ…。」

ぐりぐりと足の甲を踏む高尾、地味に痛くて変な声がでた…とりあえずやめてくれ。

ジト目の高尾をどかして、とりあえず夕食を食べるための場所に向かうことにした。


―――――――――――

あれ?なんで神田さんいるんですか?

せっかくの配信ネタっぽいところですが…完全オフという名目で潰したー


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