第49話 強制休み(1)

次の日、事務所に顔を出すとダダダダッー!と足音が近づいてきた。


「お疲れ様っすパイセン!来て早々ですが…今日はしっかり休むっす!」

「そうです!休んでください!」

ズビシッと指を指し宣言する高尾、後ろではコクコクと国立さんも首を縦に振っている。


「前休みを取ったのは何時だったっすか?」

「休み…うーん…」

「考えないとわからないってのは重症っすよ…ただでさえ強制ミッションでも無茶したんっすからね。稼ぎ頭が体壊したらうちら路頭に迷うっすよ!」

頭を押さえて、むきーっ!!という表情を浮かべながらいう高尾、だがまぁ一理ある。


「今日1日、いや…急ぎの仕事もないんで明日も休み取ってしっかり疲れを取ってくるっす!そうっすね…その活動履歴をYに上げるっすよ!」

休みを報告しろって…それは仕事じゃ…。

「わかった…っすか?パイセンはこれぐらいしないと目につかないところで仕事するかもしれないっすからね!」

「あぁ、わかったよ!とりあえず羽を伸ばしてくればいいんだろ!」

まともな返事をする前に背中を押され、事務所から追い出されてしまった。


えーと…俺一応この会社の社長なんだが……。


といいつつも、バタンッと閉じた扉の前で立ち止まっていてもはじまらない。

気を取り直して、急遽できた休みを満喫するとするかな!



駅の改札で探索者ライセンスをかざす。

こうすれば無料で電車に乗れるらしい、初めて試すので作動しなかったらどうしようと思ったが、ゲートが開いたので杞憂だった。


電車に揺られて1時間、大都会に到着した。


真っ先に向かったのは調理器具の専門店

所狭しと調理器具が置かれていて、気分は食のテーマパークだ。


飯のレパートリーを増やしたかったんだよねー!

絶対欲しかった七輪と炭を買い物かごに入れて、他に何かないかなーっと見回っていたところ――


「こ、これは!!」


ホットサンドメーカーが目に入った。

パンを挟んでホットサンドを作るにとどまらず、多彩な調理ができる超便利な調理器具。

何度も買いたいと思っていたが、いつも本当に使うか自信が持てず買うに至らなかったんだよねー…。

ブラック企業勤めだと料理なんて滅多にできないし…な。

苦笑いを浮かべ苦笑する。


でも料理配信がメインの活動になった今、これは絶対に役に立つはずだ!

むしろこれを買わずして料理配信チャンネルとは言えないだろう。

有無を言わさず買い物かごに入れて、他にめぼしいものがないか見回った。


「うーん…これぐらいにするか!」

山盛りの商品の会計を済ませて店を出る。

買ったものはマジックバックへ詰め込み手ぶらスタイル。

時間は11時、腹の空き具合絶妙なタイミングだったので喫茶店に入ることにした。



コーヒーとホットドッグを注文したあと、高尾に言われたこともあり買ったものの一部を取り出してスマホで撮影、Yに投稿する。


ここの喫茶店のいいところはFreeWifiに、電源を借りることもできて、コーヒーを飲み終わったら緑茶まで出してくれる。

喫茶店というより喫茶室、前の会社で勤めていた時は、唯一の休みの日に訪れてはよく本を読んでたなー…。


周りを見ると保険の営業を行っている人もいるが、基本的には落ち着いた客層で、平日ということもあって、人目を気にせず時間を過ごすことができる。

久々に来たけど…やっぱりここは落ち着くなー。


ここ数日の出来事を振り返る。

会社をクビになって、配信者になったと思ったら社長になって、強制ミッションへの参加。

短い間に濃密な時を過ごしすぎたと思う。


さて、この後どうするか…。


ちょっと悩むが社長の俺が休みを取ってのんびりできるのも社員のおかげ。

高尾が編集・アップロードした動画はどれもこれも好評で1,000万再生を超える動画のほうが多くなってきている。

切り抜きについては、俺としては無料で拡散してもらえるのであればそれでいいのでは?っと話したが、「プロとして仕事してるんっすから、少なくても必ず対価は受け取らないといけないっす。そうしないとほかの配信者に迷惑になるっす。」と高尾が言うので切り抜きで得た収益の2割を受け取るようにしていた。

高尾としては5割は貰うべきっす!と言っていたが、それは追々考えていこうという話をした。


切り抜きをしてくれる人も増えて、収入を得ている人も出てきたのか少し前に切り抜きで得た収入を確認したところ、結構な金額が振り込まれていた。

皆そんなに稼げてるの!?驚かされてばかりだ。


亮から、「どんどん経費を計上して節税していかないと来年ヤバいぞ?」と釘を刺されたこともあって経費を何に使うか考えていかないといけない。


配信機材は最新のものを購入したりしているが、必要経費は配信機材と通信環境、調理器具とダンジョン以外の食材ぐらい、編集機器などもあるにはあるがそこまで経費を計上できないんだよね。


高尾と国立さん次第だが、社員還元として社員旅行で温泉旅行に行くのもありだろう。

いいよねー温泉、うまい飯と、入りたいときにいくらでも入れる温泉。

周りが観光地だったらそれはそれで食べ歩き、ご当地酒の飲み歩きも楽しみの一つになる。


温泉気分になった俺はスマホを取り出すと、温泉宿を調べ始めた。


―――――――――――

これは…まさか…温泉回!?


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