第47話 強制ミッション(4)

刀を鞘に納めて、抜刀の準備。

「一撃で終わらせてくれるなよ?」


一閃――


刀を振りぬく瞬間、相手の剣が刀とぶつかり火花を散らす。


「いいな。」

剣と刀がぶつかり合う中、馬の前足がこちらに向かって飛んでくる。


「邪魔を…するな!!」

馬の前足を自分の足で抑えこみ、足に氣をぶち込んで弾き飛ばす。

馬に跨るデュラハンごと吹き飛ばし体勢を崩したところに間合いを詰めて、刀身に気を纏わせた一撃を放つ。


ズドンッ!


刀の一振りとは思えない破壊音がフロア内に響き渡る。

氣で吹き飛ばされた馬が壁にぶち当たり二つに割れる。

所詮馬、メインディッシュには程遠い。


「さて…邪魔者はいなくなった。存分に斬りあおう。」

刀の切先をデュラハンに向ける。

顔がないから見えているかは知らん。

だが…デュラハンの氣が膨れ上がり肌を焼く。



先にデュラハンが動き、禍々しい氣を纏った剣が振り下ろされる。

俺も刀を振り上げ応戦する。

剣が交差する瞬間、火花が散りその後、一瞬の静寂が支配した。

俺たちは力を込めあい、鍔迫り合いの激しさを競い合う。


「この程度…じゃないよな?」

デュラハンは全体重を乗せ押し切ろうとするが、振り上げた俺の刀はビクリとも動かない。


「もう少し楽しめると思ったんだが、期待違いだったか。」

瞬間的に力を入れるとデュラハンの腕が跳ね上がる。

顔があったならば驚愕の表情を浮かべていたことだろう。


「イレギュラーっても下層のモンスター、刀の錆にすりゃなりゃしねぇ!」

氣を纏わせた刀をがら空きになった胴体に振り下ろす。


「俺に模造刀以外を使わせてみろ。」

真っ二つに裂けたデュラハンはその場で崩れ落ちた。



「さて、フロアボスまで来ました…って…あーボス戦は丁度終わったみたいです。」

ん?あれはたしか…最近SSランクになったっていう若造か?



~かずやんSide~


すべてのモンスターがコロシアムに集まっていたようで、フロアボスまでの道中にモンスターは出現しなかった。

だがフロアボスのフロアに近づくに連れて、肌を刺すような圧倒的強者が放つ圧が強くなっていく。


圧倒されるほどの圧ではないが、気持ちを揺さぶられるようで、ワクワクさせられる。

自分には出せそうにない威圧感、どんな戦い方をするのか。


気が高鳴り、足取りが軽くなる。


下層3層を突破し、フロアボスのフロアに到着。

目の前で鎧を着た何かが切り落とされたところだった。

「さて、フロアボスまで来ました…って…あーボス戦は丁度終わったみたいです。」


<デュラハンってAランクモンスターだっけ?>

<ダンジョンブレイクっていうぐらいだからイレギュラーの可能性あったりするかもよ?>

<そうなるとSSランク相当ってこと!?>

<っていう意味だと相手が悪いよな…武蔵はSSSランクに最も近い探索者の中で最強だろ?>

<かずやんが最強じゃないの?>

<配信者と探索者の実力は全然違うんだって!かずやんは確かに強いけど流石に長老の弟子には届かんでしょ>

<そりゃだって…あれは流石におかしいだろ…>

<なんでデュラハン相手に傷一つないんだよ!>

<いや…それかずやんも怪我したことないだろ…>

<たしかに>


デュラハンが崩れ落ちたあと、素材以外が煙として消えていく。


「あぁ…君がかずやんか?」

「えっ?あっはい、私がかずやんです。」

なぜだろう、新たな獲物を見つけたというような表情を浮かべる武蔵さん。

俺…モンスターじゃないよ?


「相手が予想以下だったから消化不良でね…良かったら君の実力を見せてもらえないか?」

<「ギルド公式」えっ?あの、それは流石に…ダンジョンブレイクの検知も解除されたので、皆さん帰ってきてください>

神田さんも急な事態で困惑しているようだ。


<えっ、なに?武藤さんがかずやんと力比べでもすんの?>

<いやいや、SSランク同士でなにしようとしてんだw>

<ダンジョンブレイク騒ぎ終わったのにかw>

<【500円】何やろうとしてんだ…もっとやれ!>


「ご期待に沿えないかもですが…」

自分から進んで何かしたいと思ったことはない…が、さっき感じた期待じつりょくに触発されていた。



「君は…たしか武器を使わないんだったね。同条件で私も武器を使わない。手段は問わない私をたぎらせたら君の勝ちだ。」

勝利条件がイマイチわからない、武藤さんは独特の世界観を持っているようだ。

刀を鞘に収め、マジックバックの中に片付けた目の前の男は、特段期待してない瞳をこちらに向ける。

「では…胸を借りますね!」


<うぉー!!!>

<意味が分からんが探索者vs配信者キター!!!>

<【1,000円】ドリームマッチキタ――(゚∀゚)――!!>

<意味わかんねー!!>

<5,000円】かずやん最強!かずやん最強!かずやん最強!>


「好きなタイミングで来たま――」

開幕早々、氣を込めた拳を叩きつける。

若干フライング気味だったかもしれないが…。


不意打ち狙いの一撃だったが拳の動きを読まれたか軽く払われる。

跳ね上がる腕、そのまま袖を掴まれ――

「うん、さっきのモンスターより全然いいパンチだ。氣のノリも実に良い。」


そのまま腕を引き込まれ態勢が崩れたところ、前に出していた足を払われた。

柔道の出足払かっ!気付いたときには身体が宙を浮いていた。


「うぉっ!」

身体を捻り掴まれてないもう一方の手で地面を叩き、反動で体勢を元に戻した後その反動を活かしひざ蹴りを放つ。


「臨機応変さと反射神経もなかなか、蹴りの威力も強い。」

ブツブツ口にする武藤さん。

なんだろう…普通に怖い。

放った膝蹴りは袖をつかんだ反対の手で抑えられていた。

若干でも手がしびれてくれていたら儲けものだが…期待は薄そうだ。


そもそも…だ。

体勢を崩した時に瞬時に蹴りを入れられていたらと思うと…。


「本気の一撃じゃないよね?そろそろ本気を出してくれないかな。」

目の前の男は、先ほどと変わらない瞳をこちらに向けため息をついた。


―――――――――――

戦闘シーンって難しい…

最強感が少しでも伝われば幸いです。


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