第46話 強制ミッション(3)
「あっ…あの!ありがとうございます!」
「助けに来てくれなければ…私たちは駄目だったかもしれません。」
パンプキンのメンバーの二人が声を掛けてくる。
残りの3人は地面に座り込んで肩で息をしているようだ。
「よくあの数のモンスターを5人で抑えてくれてました。もし突破されていたらダンジョンブレイクが起きていたかもしれません。」
「ははは…、私たちだと抑えるので手一杯だったので時間の問題でした。流石SSランクですね。一人で盤上をひっくり返してしまうなんて…」
どうやら初対面だが、相手は俺のことを知っているようだ。
「初対面ですが、かずやんさんは超有名人ですから探索者だったら誰でも知ってますよ。…っと雑談している場合ではないです。」
パンプキンのリーダー
「自分たちより武蔵さんのところに向かってください。武蔵さん自分たちを逃がすために深層のフロアボスと戦闘中なんです!しかも今まで見たことのないデュラハンで…。取り巻きのAランクモンスターの大群に苦戦する自分たちでは、足手まといにしかならず自分たちはフロアボスから撤退させられ、地上に連絡を取らないとと思ったんですが…このような状態で連絡できなかったんです。」
説明しながら悔しそうに拳を握りこんでいる。
ただ…ダンジョンのモンスターがフロアの一点に集まることは稀にあるが、層を超えて、上層に向かうわけではなく下層に集中するのは考えられない。
これではダンジョンに意思があって探索者に…。
と、今は深く考えても仕方がない。まずは目先の問題を解決しなければ…。
「わかった。とりあえず湧き水は置いていくから各自飲んで傷を癒してくれ。少ししたら中層のポータルから地上に戻るように!」
「はい!ありがとうございます。」
別れの挨拶もそこそこに、下層フロアボスの層に向けて走り出した。
~時は少し遡る~
上層、中層とモンスターが少ない…いや気配がない。
中層と下層をつなぐコロシアムのような場所にもモンスターが一匹もいない。
一体このダンジョンはどうなっているんだ?
探索を続け、下層に突入した。
下層に入るとまばらにモンスターが出現しはじめるが、どれもこれもBランク以下でAランクモンスターが一匹も見当たらない。
それに下層なのにEランクモンスターまで出てくる始末。
下層にいるモンスターの比率を考えてもこの状況は異常の一言に尽きる。
探索者としての嗅覚が騒ぐ。
フロアボスがいるフロアの前に到着した。
中から金属のぶつかるような戦闘音が響き渡り空気を揺らす。
なんだこの状況は…。
先行していたパンプキンとAランクモンスター10数体が戦闘を繰り広げている。
その奥には馬にまたがった顔のない鎧…デュラハンは戦闘に加わることなく行く末を見守っているようだった。
キングミノタウロス、メガスライム、ゴブリンキング、ジャックウルフ…本来Aランクモンスターは個々の個性が強く統制が取られることはない。
ただこの場にいるモンスターは何か…いや奥にいるデュラハンに怯えているようで連携しながらパンプキンに向かって攻撃を繰り出していく。
連携の取れていないAランクモンスターであれば、返り討ちにできていただろうが、モンスター同士が連携しながら攻撃を仕掛けてくるため、あと一歩決め手に欠けていた。
このフロアにボスが召喚する以外のモンスターがいること自体イレギュラーだが…
あのデュラハンはAランクモンスターの枠に収まる器には見えない。
「ふふふ…面白い。」
無意識のうちに口角が吊り上がる。
苦戦しているパンプキンの戦闘に割り込み、キングミノタウロスを視界にとらえた瞬間、誰にも気付かれないほどの速さで刀を抜いた。
その一瞬、刃は光のように輝きキングミノタウロスの身体は音もなく二つに裂けた。
「まだまだだな…」
血しぶきが舞う中、刀を鞘に納めた。
「あ…あなたは!?」
「私のことはどうでもいい。ここは私が引き受けよう。君たちはギルドにこのことを伝えてくるんだ。」
足手まとい宣言。
パンプキンの面々も思うことはあったようだが、俺の後ろのキングミノタウロスの亡骸を見て意識を切り替えたようだ。
「すみません…。なるべく早く応援を呼んできます!」
踵を返し、フロアボスから引き返すように足早に去っていく。
デュラハンの目が赤く光る。
キングミノタウロスとゴブリンキングの身体がビクッと震えたかと思った次の瞬間――
ジャックウルフが大きな口を開け俺に噛みつこうと襲ってくる。
噛みつく瞬間、キングミノタウロスとゴブリンキングがその隙をついて、脇目も振らず撤退するパンプキンのパーティー目掛け走り出す。
「敵から視線を逸らすのは三流のやることだ。」
刀を抜刀する際、柄頭でジャックウルフの横っ面を叩き意識を飛ばしたところで、抜いた刃に氣を乗せた一閃を放つ。
キングミノタウロスとゴブリンキングの上半身がズルリと落ちる。
意識が飛んだジャックウルフの背後から、メガスライムが飛び出し、その巨体から粘液をブチ撒けてくる。
「悪くない…が、力不足だ。」
足に氣を乗せ開き足で粘液をかわすと、ジャックウルフごとメガスライムを一刀する。
この程度か?
その後も襲い来るAランクモンスターを刀で沈めていく。
「さて…残るは大将、お前だけだ。」
デュラハンと
―――――――――――
最強はイレギュラーをどう相手するのか…。
「★★★」や「ブクマ」いつもありがとうございます!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます