第44話 強制ミッション(1)

次の日、神田さんが家まで来てくれた。


「おはようございます和也様。早朝に申し訳ございません。早速で申し訳ないですが車を用意しているので来ていただけますか?」

神田さんについていくと、キャンピングカーを豪華にしたような車が家の前に止まっていた。


「局長、和也様をお連れしました。」

神田さんが入口の扉を叩くと、入ってくれと声が返ってくる。


「はじめまして、かずやん。私はギルド本部の局長をしている四ツ谷史郎よつやしろうだ。よろしく頼む。」

車の内装は高そうなソファーと机と俺の知っている車の内装と異なっていた。

神田さんには事前に同期であるという話を聞いていたが、若くして局長という立場に上り詰めただけあって、フランクのように笑顔を浮かべているが、ピリッとした空気を感じる。


「高円寺和也です。よろしくお願いします。」

四ツ谷さんから名刺を受け取り、席に座るよう促されたので対面の席に着く。


「すまない。立場的なものもあって、圧のある印象を与えてしまっているかもしれないが、そんなつもりはないので気にしないでくれ。あと腕っぷしには自信がないので暴力で訴えかけてくるのは勘弁してほしい。」

腕を振りながら力がないアピールをする四ツ谷さん。

まあ確かに筋力はないが、何を考えているかわからない深い瞳はこちらをすべて見透かしているようにも感じてしまうので、敵に回したくないタイプに感じる。


神田さんは俺の隣に座ると静かに車が走り出した。


「時間を無駄にするのはお互い不毛なだけなので、強制ミッションについて説明しようと思う。神田からSSランクの責務については話を聞いているね?」

「はい、SSランクになると国やギルドから依頼を受けることがあるという話は聞きました。」


「よかった。今回は○○市でダンジョンブレイクの可能性があると検知した。このダンジョンは上層3層、中層3層、下層3層と9層のダンジョンになっていて、その下層についても過去にBランク探索者のパーティーで攻略したという実績があるんだ。念のためAランク探索者のパーティーに討伐依頼を出してたんだが、そのパーティーが音信不通になって今日で4日経過した。9層のダンジョンは早ければ1日、慎重に行った場合でも3日あればクリアできると言われているにも関わらず…だ。」




「イレギュラーな状況が発生した可能性が高いということですか?」

「報告も上がってきていないから単純に探索に時間が掛かっている可能性は捨てきれないが、その可能性は否定できない。」


なるほど…。Aランク探索者のパーティーが音信不通となると、イレギュラーが発生したと考えるのは普通のことで、SSランクに連絡が来るのは致し方がないだろう。

「この内容だと、昨日急いできた方が良いと思ったんですが、今日でも良いとした理由はあったりするんですか?」


疑問に思ったことを口に出した。

この内容だと急いで事に当たったほうがよいと感じるのは俺だけではないはずだ。


「あぁ、それはだな。ダンジョン付近に住んでいたSS級ランク探索者が先に向かってくれているからだ。当人からは他の探索者はいらないと言われていたんだが…、国側は念のためという言葉が好きでバックアップ要員として最近SSランクに上がったばかりのかずやんに様子を見てきてもらおうという話になったんだ。」

なるほど…SSランク探索者が向かっているのであれば大丈夫…なのか?

「しかしイレギュラーがAランクモンスターだった場合、同ランクのSSランクってことになりますよね?それはまずいのでは?」


ふむっと、四ツ谷は手を顎に当てるしぐさをした後、ピンと人差し指を立てた。

「そこは心配ないと考えている。というのも向かっているのは日本唯一のSSSランク探索者、長老の一番弟子、実力的にはSSSランク相当と言われている探索者が向かったからだ。」

SSSランクに近いということは、SSランクになりたての俺より段違いに強いに違いない。

であればイレギュラーのモンスターとも渡り合えるだろう。



「昨日の夜、こちらから連絡してすぐ探索を開始したと報告を受けているから道中にイレギュラーな事象があった場合は合流できる可能性があるかもしれない。ただかずやんが後追いで探索中に問題自体が解決してしまう可能性も十分あるだろう。」

「ダンジョンブレイクを回避するのが目的なので、問題解決できているならそれに越したことはないです。ちなみにですが今回の件、道中配信はしてもいいんですか?」

「ダンジョン配信者のことは理解しているつもりだ。そこは配信してもらって構わない。むしろ配信を通じて状況を把握できるからこちらとしても助かる。必要に応じてギルド公式アカウントで適宜フォローしよう。(探索者ってのは自由すぎて定期的な連絡はまずないし…そんな余裕がないのかもしれないが…)」

「ありがとうございます。」


車が停止し、運転手が手で合図を送ってくる。


「ダンジョンに到着したようだ。今回は何事もなく終わるかもしれないが初めてのミッションだ。よろしく頼む。」

「わかりました。お役に立てるかはわかりませんが善処します。」

「和也様、頑張ってきてください。」


四ツ谷さんと神田さんに送り出された俺は、警備体制が敷かれたダンジョンに入っていった。


―――――――――――


イレギュラー編になるのか、他のSSランク探索者の実力はいかに!

あとAランク探索者は無事なのか!?


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