第40話 姫っちゃんコラボ(7)

エメラルドキャベツを一口サイズにカットして、汲んでおいた湧き水できれいに洗ったら皿に盛る。

あとはニンニクとパセリをそれぞれみじん切りにしておこう。

次に、ロケットラビットの背肉ロインと、ヒレ肉を食べやすいように一口大にカットして置いておく。

最後にロケットラビットの引き締まったもも肉を何本か用意していちむらのスパイスをふりかけて味をなじませる。


「下準備も終わったので調理していきますね!」

「前のミノタウロスの時も見ましたが…手際良いですねー。」

姫っちゃんがすごーいっ!っと言いながら俺が何を作るのか興味津々のようだ。


マジックバックからフライパンを取り出し、その上にバターを置いたあとカセットコンロで火をつける。

「火を入れてバターを溶かしたあと、みじん切りにしたニンニクをいれてバターにニンニクの風味をうつします。

そのあとフライパンにロケットラビットの背肉ロインと、ヒレ肉を入れた後は中火でじっくり両面に火を入れる。

火が入ったら、塩と胡椒で味を調えて、エメラルドキャベツを載せた皿に移したあとパセリをふりかけたら…

ウサギのガーリックバターソテーの完成です!」

それに合わせてぐーっ…かわいいお腹の音も聞こえてきた。

耳まで真っ赤な姫っちゃん。

「姫っちゃんも待ちきれないようなのであと1品急いで作っちゃいますね!」

<姫っちゃんかわいい!>

<顔真っ赤…かわいー>

<そりゃおいしい匂いすると仕方がないよね!>

<俺も食べたいー!>

<工程はシンプルなのに…めっちゃ旨そう!>

<匂い嗅ぎたい>

<鳥のもも肉とむね肉で代用できるかな…試しに作ってみよう!>

<2種類の肉の特徴知りたいかも>


背肉ロインと、ヒレ肉の特徴ですか…そもそもウサギ肉って脂肪が少ないんです。今回使用する肉について背肉ロインは脂肪が少ないけど、もも肉に近しい柔らかいです。ヒレ肉は赤身の比率が高いので肉々しさを味わえます。二つを合わせると丁度良いバランスになるんですよね。」

と言いながらフライパンをキレイにした後、オリーブオイルを大匙一杯入れて火をつける。

あとは――

「さてお次はロケットラビットを焼いていきます。」

一口サイズにカットして串に刺しスパイスを振って焼いたものをかぶりつくのもそれはそれでおいしいが、今回のチキンレッグのように骨にしっかりと身がついていて手で持ってかぶりつくのに丁度いい肉がある。

これを一口大にカットするのは色々もったいないので、このまま調理することに決めていた。


ジューッという肉の焼ける音と共に辺り一面に漂うスパイスの複雑な香り。

「うー…お、お腹すきますぅー…」

よだれの垂れる姫っちゃんはじーっとお肉の焼けていく過程を凝視している。

<いやいや怖い怖い笑>

<お肉は逃げないよ笑>

<これはレア顔>

<でもめっちゃ動いてお腹減ってるだろうし…そうなる気持ちはわかる>

<スパイスの香りってヤバいよね…空腹時だと特に…>


「ですよね!私…おかしくないですよね!こんな空腹な時に鞭打つような匂いをさせるのがいけないんです。」

ふんすっと鼻を鳴らすが、視線はお肉に釘付けの姫っちゃん。

「あ、あははは…もう少しでできるんでもうちょっと待ってくださいね。」

「はい!」


しばらく火を入れた後にお箸を突き刺してみると透明な肉汁が出てきたので、中まで火が通ったようだ。


「さて、お待たせしました。ロケットラビットのスパイス焼きです!さて2品完成したのでご飯にしましょうか!」

「はい!もう待ちきれないです。でもその前に…」

じゃん!っと視聴者に向けて姫っちゃんと自分の二人がビール片手に持った姿を見せる。

「本日はYUHIさんの案件でウルトラドライを飲んでいきたいと思ってます。まあ視聴者の皆さんにとってはおなじみのやつですね。では早速姫っちゃん、もしよければ皆さんもいいですか?缶を手に持ってもらって…」

「「じゃん金色のヤツ!」」

二人で蓋を開け、モコモコの泡が出てきたところで――

「「カンパーイ!!」」

ごくごくと二人で金色を流し込む!

あーっ!最高!運動の後の一杯は染みる―!!

<かんぱーい!>

<かんぱい!>

<カンパーイ!!>

<かんぱいー!>

<乾杯!!くーうめー!!>

<このために金色買った!>

<のどごしサイコー!>

<YUHI有能!>

<でも…そんなうまそうなつまみがない…>

<くーっ!うらやましいウーマーイーツ早く俺につまみを届けてくれ!>

<お届け時間1時間とかになってんだけど…かずやん効果か?>

<事前に買ってきていた俺勝ち組>

<うらやましいな!>



「ではでは、乾杯もすんだので…食べていきましょうか!」

「はい!もう待ちきれないです!ソテーもおいしそうだけど…やっぱり最初はこれ!絶対これ!!」

スパイス焼きに手を伸ばし配信を気にすることなくガシッと掴んで豪快にかぶりついた。

「お…おいしー!!!!」

やっぱりこういう料理はワイルドにいくのが一番おいしいよね!

姫っちゃんはその後、ビールをぐびぐび…


「ぷはぁー!!最高です!!」

<金色買ってくる!>

<これは犯罪級笑顔!>

<永久保存!>

<守りたいこの笑顔!>


わかるわかる。

俺もスパイス焼きをかじりビールをごくり。

はぁーさいこー。

ただ今日は姫っちゃんが全部持っていったなー笑


「お次は…ガーリックバターソテーいただきます!」

ペロリとスパイス焼きを食べた姫っちゃんは、ガーリックソテーに手を伸ばす。

「こ!これは!!!プリッとしたお肉と、しっかりしっとりしたニンニクの食欲を加速させる旨みと包み込むバターの風味…あぁ…おいしい」

恍惚とした表情を浮かべる姫っちゃん。

その容姿とあいまって背徳的に映る。

<エッロ!>

<おい!>

<姫っちゃん…食事で蕩けてる>

<かずやん飯どんなけー>

<俺も食べてみたい…>

<俺も!>

<私も!>




「「ごちそうさまでした!!!」」

マジックバックに入れてたビールを飲み干して、酒の肴も食べ終えたので配信を終えた。


「すごく美味しかったれす…師匠はいい旦那さんになれますれ…」

「ははは…残念ながら相手はいないですよ。」

飲みすぎてちょっとろれつの回ってない姫っちゃん。

配信終了タイミングは丁度良かった。


「私がりっこう……ぐぅ…」

普段と異なる氣の使用に、初下層とプレッシャーの数々体力はもう限界だったのだろう。

緊張の糸が切れてしまったか、姫っちゃんは静かな寝息を立てていた。


「うん、お疲れ様。」

姫っちゃんの頭を軽くなでつつ、姫っちゃんを背負って中層フロアボスのポータルから地上に帰った。


―――――――――――

安心してください。今更ですが姫っちゃんは20歳を超えてます。

2話に分けるか悩みましたが…分けるポイントがないのでそのまま突っ走りました。

過去一長い話です。文章量が安定しなくてすみません。


姫っちゃんのコラボ配信長くなりましたが、ここで終了になります。


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