第36話 姫っちゃんコラボ(3)
姫っちゃんの状態からセーフゾーンまで移動するのも困難だったので、襲ってくるモンスターは俺が軽くいなしつつ、その場で少し休息をとってもらっていた。
「あ、あの…もう大丈夫です。」
「あぁ…よかった。その…ごめんなさいっ!」
立ち上がりこちらに近づいてきた姫っちゃんにまずは…90度のお辞儀。
氣の調整が終わってから、色々やらかした感をヒシヒシ感じていた。
三鷹さんからも『あとでよろしいか?』とDMで言われてしまった…ガクブル…。
「いえ…大丈夫です。初めての感覚でちょっと戸惑ってしまっただけなので…それよりも、なにかすごくしっくりきたというか、変わった感じがするんです!今はそれを試してみたくて…」
手をグーパーしながら、純粋な瞳を輝かせる姫っちゃん。
その目の輝きを失わないで欲しい…守りたいその笑顔。
そんな話をしていたところに、少し離れたところからダークボアが現れる。
「ダークボアか…図体も大きいので的としては丁度いいかもしれないね。さっきの氣の流れを意識して戦ってみましょうか!」
「はいっ!」
元気よく返事をくれる姫っちゃん。
洞窟内は結構響くので予想通りダークボアもこちらの存在に気付いたようだ。
地面を大きく蹴りつけると一気に加速してこちらに向かって走ってくる。
「姫っちゃん!左に避けつつ短剣に氣を込めて、全力の一撃をあのデカブツの右足にお見舞いしてやりましょう!」
「はいっ師匠!!」
俺の言葉通り、ダークボアの直進をなんなく避けた姫っちゃんは避けた後、自身の左の軸足を地面に縫い付け、そのままの勢いで短剣を振りぬいた。
シュッ!
短剣の乾いた切り裂き音、ダークボアの胴体と右足につけた一線は次第に上下にズレていき――
……ズシンッ!
ダークボアの右足は重力に逆らえずそのまま地面を転がった。
最高速度で突っ込んで来ていたダークボアは足一本を失ったことで自重を支えきれずそのままゴロゴロ転がり背中から壁に衝突したあとピクリとも動かなくなった。
「すごい…」
さっきの一撃を思い出しているのか、自分の手とダークボアを何度も見ては、姫っちゃんは無意識にそうつぶやいた。
後は何度も繰り返して、意識しなくてもいつでもこの状態をできるようになれば、Aランクも十分見えてくるだろう。
「師匠!ありがとうございました。今までの感覚と全く違って言葉にできない感じだけど…なんというか…本当にすごいです!」
キラキラしたまなざしを向けてくる姫っちゃん。
ここまで反応してくれるととてもうれしいものだ。
<【1,000円】姫っちゃんが覚醒した…>
<【500円】スーパー姫っちゃん…>
<ダークボアの足って短剣で切れるもんなの?>
<
<普通に無理だろ…ダークボアを狩った他の動画でも数人で殴りまくって何とか倒すレベルだったぞ>
<【4,545円】かずやんいたずらしたかっただけじゃないんだ…>
<氣の流れを見るって化け物か…>
<パネェ…俺もかずやんに氣を見てもらいたい!>
<私も氣の調整してもらいたいかも///>
<本当に氣の調整してもらいたいだけ…か?>
<お、俺も見てもらいたいでやんす!>
いたずらって…三鷹さん見てるかもしれないのにそんな無謀なことはできないよ。
「あともう少し中層で武器に氣を込めるのを試したら、下層にメイン食材を取りに行こうか!」
「はい!師匠!」
ドロップ品については、地上に戻ったらギルドに買い取ってもらった合計金額を折半しようと事前に話をしていたので、ダークボアをサクサクッと解体して、マジックバックに詰め込んだ。
その後は中層で出現する色々なモンスターを相手に、氣を意識しながら果敢に攻めてもらって、氣のコントロールを身に付けてもらった。
―――――――――――
姫っちゃん…覚醒!地上に戻ったら色々起きそうですね!
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