第33話 国立ひびきの成長(2)

「ただいまー!」

配信を終えた俺は、事務所に顔をだした。

さて企画とスケジュールを任せてみた国立さんはというと…


「あっ、高円寺社長!ちょっと聞いてください!」

「あはは、社長って硬いから高円寺さんとかでいいよ。」

「シャチョー笑」

「高尾お前はうるさい」


国立さんの席の近くに移動すると、ノートパソコンに繋いだ外部ディスプレイをこちらに向けてくる。

「最初のコラボはこれしかないと思ってました。最初のコラボは姫っちゃんと行いたいと思っています。そこで高円寺さんには2パターンの企画内容を用意したのでどちらが実現可能かお聞きしたいです。」

「ふむふむ…」


国立さんが用意してくれた資料に目を通していく。


これから紹介する2つの案のどちらも探索終わりに狩ったモンスターを調理してご飯を食べる企画となっている。

今回の配信はYUHIの案件で行われ、探索後のダンジョン飯を食べるときにウルトラドライの商品宣伝を行ってほしいというもの。


ダンジョン探索に関しては2パターンのプランが用意されていて、内容を見る限り俺がどれぐらいであれば対応可能かを判断するためのプランを用意してくれているようだった。


・下層でダンジョン飯

普段の俺が行っている動画と差はないが、姫っちゃんは下層経験はないので、フロアの負荷がない草原フロアでのコラボ配信を行う。

姫っちゃんはBランク探索者なので、不測の事態に俺がフォローできる場合のみ実施可能と記載されている。


・中層ガチ攻略&ダンジョン飯

SSランクの探索者としてBランク探索者の姫っちゃんを指導しつつ中層を踏破する配信。

下層よりインパクトが欠けるが、イレギュラーが発生しない限り安心して配信可能ではないかと記載されている。


1パターンだとその案がダメだった時、リカバリが効かないので、何パターンか用意してくれているのはとてもありがたい。

スポンサーの意向ありつつ、


「ど、どうでしょうか?」

「いい企画じゃないかな?2案用意してくれていて助かるよ。そうだな…安全マージンを十分にとったとしても、不測の事態が起きないようにフォローはできるから下層探索にしよう。あとは…そうだな。できるかわからないけどせっかくだから指導もいれようか。うん、いいね下層の案で調整をお願いできるかな?」

国立の表情がぱあっと明るくなり、よしっとガッツポーズした。


「す、すみません。うれしくてつい…ではこちらの案でコラボを進めますね!」

「うん、よろしく頼むね!でも張り切りすぎて無理はしないようにね!」


といったところで高尾が国立さんに飛びついた。

「やったっすね!くにやん。一発で企画が通るって中々やるっすよ!」

「高尾…お前ってやつは…」

「いいんです。ありがとうございます。はじめさん。」

「ふふーん。くにやんと私の仲っすよ!パイセンは口をださないっすよ」

「わーったよ!さて…と、二人とも晩御飯は食べたか?」

「「たべてないです(っす)」」


「よし、今日は?今日もだな。二人とも頑張ってくれたし活きのいい鳥を取ってきたから晩飯を作ってやるよ。」

「やったーパイセンの晩御飯ー!」

「えっ、かずやん飯食べられるんですか!」

「パイセンの手料理おいしいっすよ!今日は何を作るんっすか?」

「そうだな…晩御飯はロック鳥のチキン南蛮と、卵スープをサクッとつくるかな!」

やったー!っとキラキラした瞳をこちらに向けてくる高尾と国立さん。

俺はなんだかんだで良い従業員に恵まれたようだ。


―――――――――――

チキン南蛮は九州とそれ以外ではタルタルの有無が違う。けど同じ九州でも宮崎のタルタルは砂糖が効いてて味が違うらしい。料理というジャンルは奥が深いなーってしみじみ思ってます。


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