第32話 国立ひびきの成長(1)

国立ひびきは会社のデスクでうーんと唸っていた。


高円寺社長が配信者として頭角を出したことで、こちらから営業を掛けなくても向こうから案件やコラボの依頼が続々来るようになったらしい。

社長一人では対処しきれない状態になってしまったことから私はこの会社に雇われることになった。


例えば、飲料最大手のYUHIからの案件や、香辛料大手のいちむらからオリジナルスパイスを作らないかと相談を持ち掛けられたり、大手事務所からコラボ依頼もちらほら届いている。

他にもダンジョン装備会社大手から案件があったりと怒涛の勢いで仕事が舞い込んできている。


この会社に入社して日の浅い私の最初の仕事は大量に来た依頼を仕分けて、どういう案件でいつまで回答の期限か必要か一覧にまとめた。

あとは社長に相談しに行き、どの案件を受けてどう進めていくかを決めるようにしようとしたのだが、心の片隅でこれだと今までと仕事の進め方が変わらないなと感じてしまっていた。



「資料ありがとう。これはこれですごくいいんだけど。このチャンネルのために、この案件やコラボをこういう企画内容とスケジュールで受けようと思いますって報告してもらってもいいんだよ?刺激が欲しいって言ってたと思うし、慣れてきたら完全にスケジュール任せてもいいかなって思っている。他にもこうしたいっていうのがあればドンドンやっていいからね?失敗はしたらしたで次に活かしてもらえればって思ってるし、ただ…完全週休二日で収まるように業務量の調整はお願いするよー。」

高円寺社長はリストを見た後、私の顔を見て自分がうーんと感じていた部分を指摘した。

「えっ、でも…」

「やってみて難しいようだったらサポートするし、せっかくだから今日一日どういう企画を受けるかプランニングしてみてよ。でもありがとう急ぎ回答が必要ないっていうのがわかっただけでも助かる。これで安心して配信ができそうだ!」

そう言い残し「それじゃ!何かあったら高尾に聞いて!」と、浮足立ってダンジョン探索に出かけて行った。

久々だから気持ち高ぶるのも仕方がないだろう。



そして冒頭に戻る。

今まで最終的な意思決定は配信者もしくは上長に委ねてきた。

自分は案件の条件や期日をまとめたり、決定事項後の調整役の立ち回りをするだけの存在だったと言える。


そりゃ自分が決定したことじゃないから刺激が足りないと感じてしまうだろう。

ただ、まさか最初の一歩で全部任せてくれるとは思ってもいなかった。

うれしいけど、結構怖い。

今まではやりたいと思っていたけど、いざ振られると躊躇してしまう。

そんな感じだ。


「おっ、どうしたんっすか?」

「あっ、はじめさん。」

少し前に動画編集者として入社した高尾はじめさん。

自分より年下だけど気にせずフランクに話し掛けてくれる。

フランクすぎて高円寺社長には怒られているけど話しやすくて助かっている。

どうするか悩むも、ことの経緯を話してみることにした。


「なるほどっすねー。でもパイセンって背伸びしたらできそうかなって思ったらとりあえず仕事振ってくるんっすよねー。まあ大変かもっすが、失敗しても企画練り直したり、スケジュール組みなおすぐらいでリカバリできるっすから、自由に考えて自分なりの回答を出してみるといいかもっすよ?」

私の話を聞いた後、はじめさんはうんうんとうなずきながらも基本前向きだ。

「なるほど…そうですね!悩んでても始まらないし一度やってみます!」

「その意気っす!」


高円寺社長が登場した動画は一通り見ていた私は、改めて数々の案件やコラボ依頼に目を通した。

そして…最初コラボをするならこれしかない!っと思っていたコラボ依頼と案件を組み合わせた企画を思いついたので、相手先に連絡を入れて企画をまとめていった。


―――――――――――

仕事の進め方って人によって変わってくるので永遠の課題ですよね…


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