第30話 下層配信(5)

セーフゾーンに到着した俺は、鞄からダンタマ、ロック鳥のモモ肉(一食分)2枚と卵を取り出した。

今日の料理は、あつあつのご飯を持ち運べるようになったからには絶対に作りたかった一品だ。


とはいえ、その一品だけというのもさびしいので、色々作っていこうと思う。

「まず卵をかち割り、中身をかき混ぜます。」

ダチョウの卵はトンカチが必要というけれど、この卵も角でぶつけるだけで割れる代物ではないので氣を込めた一撃でヒビを入れて、中身を取り出す必要がある。

一人前を軽々と超える量の卵白と卵黄が入っているので、かき混ぜて今回使う分以外はマジックバックに収納することにした。

かき混ぜた状態で、永続的に入れた状態を保存できるので消費期限すら気にする必要がなくなるのはチートだ。流石にダンジョン探索中にこういう食材を使うのは無粋なので、自宅で料理するときか、もしくは料理配信時に使うことにした。


<すごい光景だな>

<ボールに移すとかじゃなくて卵の中でかき混ぜることができるんか…>

<一般人はあの卵割れないだろ…>


「まな板の衛生上、野菜→肉の順で下準備をしていきます。まずはダンタマを薄切りにします。今回はちょっと野菜が少ないですが、そういう日もあるでしょう!さて1枚目のモモ肉を一口大にカットします。次に2枚目のもも肉は観音開きにして、いちむらのスパイスをふりかけて味をなじませると下準備は完成です。」


カセットコンロを取り出し、フライパンに火を入れる。

「火は中火で、モモ肉の皮目を下にして置いて皮をしっかり焼きます。ただそのままだと火の入りが中途半端になってパリパリとブヨブヨな不均等な食感になるので、火を均等に入れて皮がパリッとなるようにアルミホイルを肉の上に載せて手でしっかり押さえます。アルミホイルは手を汚さないようにですね。その間に出てきた油は肉の面にかけて肉の面にも火を入れます。」


皮目がしっかり焼けて、皮目を箸で叩くと軽く音を響かせるぐらいになったところで、皮目が上を向くよう肉をひっくり返してしばらくしてから火を止めた。

こうしておけば余熱で肉に火が入る。

火が入ったのを確認した後は、肉を皿に移して次の一品に取り掛かる。


「次は、フライパンに和風だしと醤油、みりん、酒と水を入れて薄切りにしたダンタマを入れたら火をつけて煮立てます。調味料を合わせるのが面倒だったらめんつゆで十分、煮立ってきたらモモ肉を加えて火が通ったところで溶き卵を回し入れて、半熟の状態で…」

じゃーん!っとマジックバックからホカホカご飯の入った丼を取り出した。

その上に半熟の状態で閉じたそれを乗せれば完成!


「モモ肉のスパイス焼きと、親子丼の完成でーす!」

<下層で親子丼!>

<ここまで手の込んだ料理作る配信者は見たことない>

<手際よすぎ>

<【500円】食べたい…>


「では早速食べていきましょう…の前に、じゃん金色のヤツ!」

ビールの蓋をパカッとあけてグイっと流し込む。あーーー!キリッと辛口これを飲むためここまで来たー!


「まずはスパイス焼きから…」

お行儀よく切り分けるなんてことはせず、箸でつかんでガブリと食らいつく。汚れを気にしないなら手づかみでいきたいぐらいだ。

皮に歯が入るとパリッと小気味いい音が響く。

続いてスパイスと肉の旨味が口いっぱいに広がって幸せ気分を味わう。

最後にビールをゴクリと行けば…

「皮のパリッとした食感と、肉の旨味がスパイスと合わさって…控えめに言ってさいこー!」

<【500円】皮の音やべぇ!>

<あああ、これビール絶対あうやつ>

<鶏むね肉買ってきて試そう>

<【1,000円】かずやんのASMR>


「続いては…親子丼!」

ふわふわの卵とジューシーな鶏肉が、まるで味覚のオーケストラのように調和して味蕾を魅了する。

肉と卵、それ単体でも十分美味しいが、だしを纏った米が合わさると…もう止まらない。

箸が止まらずガツガツ食べるシーンをしばらく流した後――


「日本人は…米でしょう」

最後の一口を食べ終えてふぃーと幸せのため息、余韻を楽しむようにビールを一気に飲み干した。

<そと卯行ってくる。>

<いちむらスパイス万能だろ>

<かずやんがこだわりぬいたスパイスとか出したら絶対買う>



「皆さん本日も、視聴ありがとうございましたー!」

下層もまだ入ったぐらいの配信だけど、みんな楽しんでくれたようで何よりだ。


―――――――――――

親子丼が無性に食べたくなったので小説にぶつけました。

な〇卯手軽でいいよね…近所にできないかな…

本日も2話更新やっちゃいますか!


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