第22話 悲しい男

<ギルド本部>


「高円寺和也様に依頼したグリフォンのソロ討伐ですが、討伐完了の依頼と討伐証明の爪を受領しました。」

「昨日の今日で?まさか!ブランクが2年ほどあるとのことだったよな?流石に冗談だろう?」

ギルド局長の四ツ谷史郎よつやしろうは怪訝そうな顔をした。


「いえ冗談ではありません。生配信による討伐と、念のためと解体シーンの動画は別途受領しています。確認されますか?」

神田は机の上にグリフォンの爪を置き、自分の持つPCを指さしながら言った。

「いや、いい。君がそういうってことは内容は確認済みだろ。しかしAランクモンスターをブランクありでソロ討伐か…めちゃくちゃだな。」

「はい、サバイバルナイフの一撃で仕留めていたのでSランクの中でも実力は飛びぬけていると思います。」

「はっえっ?一撃?グリフォンだよな?ちょっ…やっぱ動画見るわ!」

口調が崩れ椅子から勢いよく立ち上がり、神田が手に持っているPCを奪い取って討伐シーンを再生しようとする。

「あっ、間違えて解体シーンの動画が流れるようにしていました。」

「ぐぁっ!モログロシーン!お前俺がこういうの苦手だって知ってるだろ!」

「えっ?そうでしたっけ?」

神田と四ツ谷はギルド職員とギルド長という関係でもありながら、幼馴染でもある。



「たしかに…これはあまりにも…」

鷲とライオンの切れ目を一閃。

こんな芸当をやってのけるのは和也ぐらいしかいないだろう。

「かずやんか…」

「興味が湧きましたか?」

「あぁ…これほどの実力者とは…滅茶苦茶だな。」

「和也様をどうされますか?」

「異例ではあるがSランク探索者へのランクアップ、SSランク昇格するかの確認と責務の説明を行ってくれ。可能な限りかずやんにはSSランク以上になって貰いたい。」

「四ツ谷局長は和也様をかずやん呼びされるんですね?」

「ん?ああまあ一般的な呼び方を踏襲しないとだな。」

「美味しそうですもんね。あのご飯」

「そうだな…神田君。どうだい?今日の晩、近所においしいステーキの店があるんだが?」


「すみません。遠慮しておきます。四ツ谷局長のお誘いであれば受付の子たちなら喜んで来てくれると思いますよ?」

幼馴染ではあるが、残念ながら一歩先の進展に繋がらない二人だった。


「そういえばSランク昇格時、和也様に専属サポーターを付ける必要がありますね。私がなってもよろしいでしょうか?」

普段見たことのない神田の表情に、四ツ谷はドキッとするが…するのだが…

「え、マジ?まあ神田君は優秀だし、申し分ないと思うが…」

「ありがとうございます。では局長指名で専属サポーターになる旨伝えておきます。では失礼します。」

飛び切りの笑顔をしたかと思うと、そそくさと部屋を後にしギルド局長専用部屋の扉が閉まる。

「か、かずやん…」

四ツ谷以外いない部屋で悲しい男のつぶやきが響き渡った。


―――――――――――

四ツ谷のツはカタカナなんでルビがうまく掛からない…

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