第21話 料理チャンネル(2)
「さて…グラッセもいいんですが、今日は素材の味をよりダイレクトに楽しんでほしいのでルビーキャロットとジャガイモは素揚げしちゃいましょう。油を注いで火をつけて一定の温度になったら野菜をえいやっとぶち込みます。」
「じつは…うちグラッセって甘すぎて苦手だからよかったっす。」
<好き嫌い別れるよな。ニンジンも十分甘いのにさらに砂糖で甘くするんだもん>
<でもあれが良い箸休めになるんだって、でもルビーキャロットってかなりの糖度があるんだっけ?それと砂糖は流石に相性悪そうだけど>
「グラッセは独特なので好き嫌い別れるよね。素揚げした野菜は置いといて、今日のメイン食材のグリフォンのサーロインを仕上げていきましょー!両面に塩コショウをして、煙が出るぐらい温めたフライパンで両面を焼きメイラード反応を起こして肉の香ばしさと旨みを引き出しつつ肉汁を中に閉じ込めます。
側面にも火を通したらアルミホイルでくるんでしばらく肉を休ませておいて、その間にステーキソースを2つ作ります!
1つ目はフライパンに残った油に小麦粉とバターを入れて弱火でじっくり混ぜた後、ウスターソース、ケチャップ、赤ワイン、醤油、砂糖を入れて大さじ1杯の水を入れて沸騰させます。味を見て濃いと感じたら水を大さじ1杯追加して味を調えればグレービーソースの完成!
もう1つはすりおろしたニンニク、ダンタマとポン酢を合わせて弱火で火を入れればサッパリオニオンソースの完成!
2つって言ったんですが、個人的に塩とわさびの組み合わせが好きなのでこちらも味変用に用意しておきます。」
そろそろ…肉もいい感じに火が入ったかな?
アルミホイルから肉を取り出すと肉の香りが部屋にはじけた。
「あぁ…至福のニオイがするっす。よだれが止まらないっす。」
あとは肉と野菜を盛り付ければ…
「グリフォン肉のサーロインステーキの完成!」
<8888>
<(;゚д゚)ゴクリ…>
<こんな分厚いステーキにかぶりつきたい!>
<一体いくらするんだ…>
ぴんぽーん
「おっと、丁度良いタイミングに本日の知り合いが来たかもしれないです。少し待ってくださいね。」
「来たぞー、ステーキ!!!」
扉を開けると、大男の亮が両手をバッと広げ大声で叫んだ。
「うるさいぞ!近所迷惑だ。」
「ガハハ、すまんすまん。お邪魔するぞ。肉と言えば赤ワインってことで安モノで悪いが来る途中買ってきた。」
初めましてと高尾に軽く挨拶を済ませて、席に着いた亮。
「旧友も来てくれて全員揃ったので、晩御飯にしていきたいと思います!では、いただきます」
「「いただきます!」」
グラスに赤ワインを注ぎ、ステーキを食べ始める。
分厚いステーキ肉だが、ステーキナイフはサクッと入り、一口サイズに簡単に切り分けられる。
グレービーソースをつけて口に放り込む。
こ、これはすごい…口の中に入れた瞬間肉が溶けてなくなり、強烈な肉の旨みに追い打ちの肉の旨みと濃厚なソースの風味が押し寄せてくる。
余韻を感じつつ赤ワインを一口。
濃厚な肉の風味と、豊かな赤ワインのコクが、口の中で美しいハーモニーを奏でている。
「…」
「…」
「…」
<おいおい、全員黙ったぞ?>
<それだけうまいってことなのか?>
<めっちゃ味が気になるんだが…>
「これほどの肉は食べたことがない。言葉にできなくて困ったぞ。」
「自分もっす。意識全部持っていかれたっす。」
「本当にうまいものを食べた時、何も言えなくなるっていうのはこういうことを言うんだな。グレービーソースは肉に肉の旨みが合わさって個人的には若干重く感じてしまうかも。次はオニオンソースで…」
肉の強烈な旨みとサッパリとしたソースがほど良くマッチし、これはいくらでも食べられそうだ。
お次はヒマラヤのピンク岩塩とわさび、ステーキと岩塩の組み合わせは、シンプルでありながら驚くほど奥深く、わさびのスパイシーさが絶妙なアクセントとなっている。わさびのツーンとする部分は消えるのでいくらでも食べれてしまう。ぜひ試してみてほしい。
一通り食べ終えて、どれが一番おいしかったかという話になった。
「うちこのオニオンソースが一番好きかもっす。口の中をサッパリしてくれるのでいくらでも食べられるっす!」
「俺はこの茶色のソースだな。肉の主張をより強めてくれて満足度がハンパなかったぞ。ガッツリ食べたいって時に丁度いい。」
「グレービーソースな。俺は岩塩とわさびが一番かな。岩塩が味の輪郭をしっかりしつつも、肉の油でわさびのツーンとした部分は全くないのに、ほど良いスパイシーさが絶妙でいくらでも食べられそうだ。」
<グレービーソースは流石に重そうな年頃なんで、岩塩とわさびで食ってみたいかも>
<はじめちゃん推しのオニオンソースも作り方簡単そうだし試してみようかな?>
<肉!って感じのグレービーソースよさそうだな。>
<晩御飯はステーキにしてくれって親に言ってくる!>
<さすがにステーキは厳しいから、豚バラ炒めてオニオンソース掛けて食べようかな。>
料理チャンネルの初回配信は視聴者数10,000人を集めることができて、1日で10万人もの人がチャンネル登録してくれた。
「配信中の出来事とはいえ…はじめって呼ばれちゃったっす…」
誰にも聞こえない声で高尾はつぶやいた。
―――――――――――
年取ってくるとステーキは塩とわさび、肉は赤身派になりました。
「★★★」や「ブクマ」いつもありがとうございます!
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