第14話 ブラック企業によろしく ~後編~

「いやーカズパイセン。いつかは辞めると思ってましたが、しゃちょーに啖呵切って辞めるって…ウケる」

高尾たかおか。いやー売り言葉に買い言葉、血が上ってしまった。そして別にウケはしないだろ」

同僚の高尾はじめ。俺の部下であり口調はあれだが、仕事は丁寧で俺の右腕にはもったいない存在だ。

「パイセンのチャンネル先日50万人突破しましたし、スパチャも結構飛んでたのでサラリーマンよりガッポガッポでしょ」

「…まあ否定はしないな」

ありがたいことに、初配信後に時間を作って行ったゲリラ雑談配信でも、初配信並みのスパチャをもらうことができた。

「でもパイセン仕事辞めるなら、この会社もヤバいっすね。自分も次を探そうかな?」

「ん?そうか?高尾なら十分にやっていけるだろ?」

「何言ってんすか。パイセンは自分を低く見積もりすぎっす。パイセンが受け持ったプロジェクトに参画したメンバは残業はあるけど土日休み、誰一人潰れずやってこれてたじゃないっすか。その分パイセンが激務なので手を挙げて喜べる状況ではなかったっすけど」

「まあ、それは高尾も休みの日手伝ってくれたから成り立ってただけで、俺一人だったらこうはいかなかった。ありがとう」

「あはは、感謝するっすよ。じゃあついでにですが次の就職先でも斡旋してもらいましょうかね」

「斡旋ってMouTuberになる予定の俺には人脈なんてないぞ」

「あー…パイセンの元に永久就職でもいいんっすよ?」

上目遣いで俺のことを見る高尾。

「ふー、冗談は顔と言葉だけにしろ。で、どうしてほしいんだ?」

「パイセンのイケズー、1割ぐらい本気だったんっすけどね。まあいいっす。パイセンは生配信がメインだと思うんっすけど、そのあと動画はしっかり編集して投稿したほうがウケがいいと思うんっすよね。こう見えて映像学科でてるんで動画編集はバリバリできちゃうんで良かったらその方面で雇ってくれないかなーっと、ダンジョンに一緒に入るのは厳しいのでできるのはそれぐらいっすけど…どうっすかね?」

「なるほど…」

切り抜き配信などもあるが、せっかくなのでメインチャンネルにもしっかりとした動画を配信したいとは思っていた。

今は生配信をそのまま配信しているが、どうしても見せ場以外の尺もあって、修正したいが時間はないし外注も確認が面倒で出来てなかった。

高尾がやってくれるというのであれば、知った存在だし仕事ができるのは折り紙付きとてもありがたい申し出だ。

「わかった。給料は今の給料+1分単位の残業代でスタート、完全週休2日制でチャンネルの成長に合わせて昇給っていう条件でどうだ?まあ土日休みは保証できないがな。」

「いいっすね!特に残業代が1分単位ってのが、細かい条件は会社辞めてからお願いするっす!」

高尾は自分の机の引き出しから封筒を取り出し席を立つと走り出した。

「あっ、しゃちょー!自分も会社辞めるっす。これ退職願っす。あとは退職代行に任せるっすね!」

あっけらかんに言って戻ってくる。流石の社長も口をあんぐりあけて反応できずにいた。

すでに退職願書いてたのか…用意周到すぎだろ。


「パイセン。会社辞めてきたっす!何時から働けばいいっすか?」

ニカッと笑顔で八重歯がチラリ、カラカラ笑いながら俺の背を叩く。

口調はあれだが優秀な俺の元右腕の部下、もとい動画編集者として今後手腕を発揮してくれるだろう。

高尾はじめ(女)が俺の従業員になったのであった。


―――――――――――

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