第15話 特盛

姫っちゃんにご飯をご馳走になり、後日コラボ配信する約束をして別れた。

残念ながら、それ以上の進展はない。

その翌日、出社したらサラリーマンから一転し、社長兼MouTuberになった。


激務続きだった日常が一転、朝どれだけ遅く起きても怒られない。

しかし、身体を作っておかないと一つのミスで命を落としかねないMouTuber。

いつも通り起きて探索者専門ジムで2時間ほど汗を流した後、スーパーでビールや調味料の買い物を行い帰宅した。



ぴんぽーん

さて、そろそろ家を出るかと思った矢先にインターホンが鳴る。

「ギルド職員の神田かんだと申します。こちら高円寺和也様のご自宅でよろしいでしょうか?」

なんでギルド職員が俺の家に…昔のCランク素材の件、今更掘り起こしに来たのか??

「えと…ギルド職員の方が俺に何か用ですか?」

とりあえず、出てしまったので玄関のドアを開けて対応することにした。

「改めまして、わたくしギルド職員の神田奏かんだかなでと申します。こちら名刺になります。」

「ああ、ご丁寧にどうも。すみません名刺まだなくて…高円寺和也です。本日はどのようなご用件で?」

「うちのギルド職員が過去にご迷惑をおかけて申し訳ございませんでした!!」

ビシッと90度。頭を下げて動かなくなってしまった。

「ええええ、えとと取り合えず部屋の中汚いですが入って話しません?」

あまりの勢いに周りの視線が痛い。あーご近所さんに誤解される…。

焦った俺はとりあえず神田さんを部屋に招き入れた。


「先ほどは申し訳ございませんでした」

お茶を一口、神田さんは落ち着きを取り戻した。

「いえいえ、それでご用件は?」

「さっそくですが、高円寺様の動画で活躍を拝見させていただきました。」

「動画?あーMouTubeの動画見てくれたんですね。ありがとうございます。」

「いえいえ、その動画を鑑定したところ、すべて本物という判断が出ました。」

「まあ、そうですね。」

「高円寺様はEランク探索者からランクアップされていませんが動画の実力からSランク、いえもっと上かもしれないと判断しております。」

「Sランク!?」

Sランクって日本に100人いるかいないかっていう頂点みたいな存在で、その上となるとSSランク、SSSランクと順に続いている。


「はい、ただSランク認定可能な動画は2年前に撮られたもので、今の実力はそこまでないのでは?という声も上層部から上がっております。本来ブランクなしに順当にいけばSランク、いえそれ以上のSS、SSSランクと日本一の実力があったかもしれないものの、それを腐らせたギルドの罪は重いと重々に感じております。」

神田さんはこちらを向きそして土下座する。

「ですが、我々にもう一度チャンスをいただけませんか?」

顔を上げて俺の目をしっかり見た。神田さんの誠実さは心を動かすに足りると感じた。


「チャンス…ですか?」

「こちら都合で申し訳ないのですが、下層のAランクモンスターグリフォンのソロ討伐をお願いしたいのです。」

鷲の頭にライオンの体をしたモンスターで、頭は鶏肉、身体は牛肉に近く食材としては2度おいしい、また下層では比較的容易に狩れるモンスターだ。


昔はバーベキューの食材として、よく狩っては食べていた。

思い出すとよだれが…。

「えと、グリフォンを狩る配信をすればいいんですか?あと取れた食材は食べてもいいですか?」

「はい?ええ食材は食べていただいて問題ありません。ただ討伐した証明としてグリフォンの爪を持ち帰っていただきたいです。」

「わかりました。爪ですね?丁度今日配信しようと思っていたので、ちょっと狩ってきますね!」

「ちょっと!?あのこちらから言い出しましたが…Aランクモンスターのソロ討伐はこちらとしてもかなり無謀な依頼と思っております。できなくても誰も攻めませんし失敗して撤退したとても誰も責めませんし、Aランク探索者として認定する準備も進めてますから命を第一にお願いいたします。」

「あはは、グリフォンごときでそんなかしこまらなくても大丈夫ですよ。でもお心遣い感謝します。」

ぽかんとしている神田さん…かなり美形だ。

少しつり目で大人びた顔立ちに、さらさらの黒髪を一つにまとめたポニーテール。

ぴっちり着こなしたスーツの胸元は特盛で土下座から顔を上げた瞬間にドンっと視界に入ってくる2つのそれに、不覚にも胸が跳ねた。

「では要件は以上ですので私はギルドに戻ります。討伐の成功・失敗どちらの際でも名刺に記載の電話番号からご連絡ください。」

「あ、ああはい。わかりました。」

ドキがムネムネしつつ、神田さんを送り出した。


―――――――――――

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