第7話 MTuber?

スマホを見ると珍しいことに何件か不在着信が入っていた。

ここ最近は時計代わりに持ち歩くことがメインだったからな…

とりあえず折り返し電話をすることにした。


「おう!元気にしていたか和也。何度も電話したぞ」

「急にどうした亮。久々だな。飲みの誘いか?」

「飲みもいいな。だがそれよりもお前昨日…じゃないな、今日の深夜ダンジョン探索しただろ?噂になってるぞ」

ガハハ感のある声量の国分寺亮こくぶんじりょう、大柄の大男で大学時代の同級生だ。

休みが合えば飲みに行く間柄ではあるが、ここ一年は時間が全く合わずで疎遠になっていた。

「ダンジョン探索?酔っぱらって気付いたときにダンジョンにいたが探索はしてないぞ」

「お、おう…深酒はほどほどにしろよ?死ぬぞ」

「ああ、気を付ける」

久々に声を聞いたが、なんだかんだでイイ奴だ。

「本題だ。姫っちゃんと一緒にフロアボスを倒してたが、覚えているか?」

「姫っちゃんって誰だ?」

「ここ1年で人気急上昇中のMTuberだ。登録者数はたしか500万人超えてたと思うぞ?」

「500万!?なんつー人気配信者だよ。獲物を横取りはしたが姫っちゃんだったかはわからないな。」

ここ1年のMTuber事情は疎い。激務が悪い。ただ姫路と名乗っていたので同一人物だろうとは思う。

「でだ、イレギュラーのサイクロプスに殺されそうになったところ、和也がからあげ棒で圧倒して大騒ぎになってんだよ。」

「イレギュラー?あのデカブツが?普通のと大差なかったけど…」

「んー…まあ和也の基準はこの際置いといて、姫っちゃんを助けた俺たちの英雄は誰だ!って巷で騒ぎになってるぞ」

「騒ぎにねー…んぁ!???」

電話しながらパソコンでMuoTubeで姫っちゃんのアカウントを見つけてフォローしつつ、自分のアカウントを開くと変な声が出た。

「おい、どうした変な声だして?」

「いや、なんか俺のチャンネルの登録者数が…1万人超えてるんだが!?」

最後配信していた時の登録者数は100人未満だったので、何が起きたんだ!?

「あー…10chの特定班が特定して、Yでも拡散されてるっぽいな」

恐るべきネット社会、知らぬ間に収益化基準の登録者数を軽々超えていた。

「せっかく話題になったなら、試しにMuoTubeでダンジョン配信してみたらどうだ?」

亮の提案に思案する。配信機材は型落ち品だがあるにはあるし、スマホでも十分配信できるどっちで配信するかは後で考えるとして、大容量通信の契約以外初期費用は掛からないだろう。

ダンジョン探索の武器は…ブランクはあるが最悪素手でも下層ぐらいであれば攻略できる…はずだ。

「そうだな。失敗しても月々のスマホ代の損失ぐらいだ。試しにやってみるか。」

「おう。いい感じに儲かるようだったら確定申告は俺に依頼してくれよ!色々サポートしてやっから」

大柄な体格でいかにも土方仕事をしていそうなやつだが職業は税理士、税金関係はMTuberの天敵と言われているらしいが税理士の知り合いがいるって安心感あるよな!

「必要になったら頼む。うまくいくかわからないけどな。」


―――――――――――

読んでくださりありがとうございます。


『面白い』、『続きが気になる!』という方は「★★★」や「ブクマ」していただけるととてもうれしいです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る