第6話 黒歴史とブラック企業

翌日


ダンジョンから帰宅して泥のように眠った俺の朝は遅い。

朝というより、もう昼だ。


「しかし昨日は久々にダンジョンに入ったな」

最後にダンジョンに入ったのは、何時だったかと少し昔を思い出した。


2年前、大学生でEランク探索者だった俺はダンジョン同好会に所属していた。

うちの大学にはダンジョン探索部がありそっちは人気があったんだが、人気がありすぎてDランク探索者以上しか入部できないという縛りがあったのだ。

同好会はランク制限もなかったので、入ることはできたのだが…実力のある人は探索部に入部しているのでEランク探索者の掃きだめ、しかもダンジョン探索もままならないこともあって、年々入る人は減っていて先輩が卒業したら部員は俺一人になってしまった。

俺の代で廃部は避けたいと思い、ダンジョンに潜ってはPR動画をとっては投稿することにしていた。


たとえば…

・24時間中層ですごしてみた

・上層~中層をRTAしてみた

・下層でキャンプ飯してみた

・下層フロアボスを素手で倒してみた

・上層~下層をRTAしてみた

・深層のモンスター倒してみた


上記のような動画をアップして同好会参加者を募ってみたんだが…

唯一コメントをくれる視聴者からは「CG乙!」と言われてしまう始末


じゃあランクアップしてアピールすればと思ったんだが…。

過去、中層のドロップ品を売って、バイト代代わりにしようとしたときに「Eランク探索者がソロで中層攻略はありえない。盗難品の可能性もあるので奥まで来てくれるか?」とギルド職員に尋問を受けそうになって逃げだしてから、ギルドに近づけなくなってしまっているのでそれはそれでできなかった。


そんなこんなで就活のタイミング、探索者としての活躍は厳しくても配信者として活躍できればと淡い期待を持っていたが、動画の再生数は鳴かず飛ばず(その後、同好会は消滅)、何社も面接を受けて何とか雇ってくれたのが今の会社というわけだ。


感謝はしているが、体を壊すような仕事量だけはどうにかならないものかと思う。


同僚たちも体を壊して次々と辞めてしまい、残された仕事は残った人でこなさないといけないので負のループが起きてしまっている。

やってもやっても終わらない仕事、むしろ増えているまである。


せめて残業代ぐらいと思うのだが、みなし残業200時間が手当てに含まれているのでよほどのことがない限り残業代なんて出やしない。


200時間って相当な手当じゃん!って思うかもしれないが200時間で5万円の手当だ。

月平均200時間の残業だから…時給250円、弁当すら買えやしない。


使う時間もないので、金は貯まる一方だがこんな生活長くは続かないだろう。


―――――――――――

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