10回 立花翔、vsパンチャーカンガルー ROUND1

両者攻撃せずに相手を観察している

パンチャーカンガルーは、トンットンットンッと軽く跳ねリズムと取っており、左腕をL字に構え左右に揺らしていた

対する翔はどっしり構え、脇を締め両手を顔の前において顎をしっかり隠している


『インファイターとアウトボクサーの戦いじゃねーか!』

『確かにパンチャーカンガルーの脚力ならアウト向きだよな』

『ショウの構えさまになってるな、威圧感がやべぇ』


「いんふぁいたー?みんな私、ボクシングわかんないから教えて!」


『ボクシング漫画を読破しているこの俺にまかせろ!』

『いや経験者よべやww』


そんな漫才をやっているとパンチャーカンガルーの左が炸裂する

左を撃つごとに鈍い音を発しており重たいパンチを撃っていることがわかる


『左のジャブでこの音とかどんだけ重たいパンチしてるんだよ』

『しかもあれフリッカージャブ?左が鞭みたいじゃん!』


実際にパンチャーカンガルーの左腕が何本かに増えているように見えてしまうほどの速さで縦横無尽に撃たれる

まるで鞭を振り回しているようだ

しかもその一発一発が相手をKOできるほどの強さがあるため、翔はブロックを緩めることができない


『ショウ大丈夫か?このままじゃやられるぞ!』

『攻めろ!あんなかっこよく始めたのにこのままやられたらクソだせぇぞ!』

『いやよく見てみろ、ダメージなさそうだぞ!』


翔は電光石火の左の嵐をただブロックしていたのではなく、自身にダメージが入らないようにパンチの威力を上手く受け流してしていた


そして、チャンスは訪れた

パンチャーカンガルーの左に合わせ、剣士のようなパリィを見せた

それにより左腕が跳ね上がり左半身が無防備になる


「シュッ!?」


「オラァ!!」


しかし翔の渾身の右フックはカンガルー特有の脚力で後退され空振りに終わってしまう

だが、空振りに終わったとはいえ翔の左フックの威力は凄まじく

とても人間から放たれた音とは思えない音を発していた

これに当たっていたら沈んでいたのは自分だったのかもしれないとパンチャーカンガルーは警戒を強めた


『ああ!おしい!』

『ショウのパンチも半端ないぞ当たってたら確実にKOだ!』

『その証拠にパンチャーカンガルーが右を使わずに逃げたぞ』

『てかこれボクシングだよな?なんでパリィできんの?』

『A.冒険者クオリティ』



その後も何度かパンチャーカンガルーと翔の応酬が続くも同じような結果に終わってしまうが、ここで撃たれ続けていた翔が魅せた

左をはじいた後、右のフェイントをしたのだ

強烈な右の空振りを何度も見せられたパンチャーカンガルーは凄まじいパンチを受けまいと後退したがにパンチではなくフェイント、そして前進したのだ


前進すると当然翔の射程圏内、勢いそのままに力いっぱいの右ストレート

数々のモンスター達を一撃で沈めてきた必殺の右がパンチャーカンガルーを襲う


しかし相手は深層という強者が入り乱れる地獄で戦い続けている猛者

反射的に一度も見せてなかった右を撃つ

体勢が崩れていたが、それでもお構いなしの鋭い右のカウンター

互いの拳が顔を捉える



バキッ!!




カナや視聴者の目にお互いの拳を顔面に受ける両者の姿

互いに顔が飛び、後ろにふらつく


後退しながら撃つパンチと前進した勢いを乗せたパンチ

どちらが威力が強いのかは一目瞭然

結果パンチャーカンガルーだけがそのまま倒れた

先程のダウンの仕返しに成功した瞬間だった



『うおおおおお!やりやがった!!』

『ダウンを奪った!』

『ボクシングの鬼相手にボクシングでダウンとか初めてみた!』




流れるコメント、その中には勝ったと書き込んでいる視聴者もいたがその言葉を嘲笑うかのように何事もなかったかのように立つパンチャーカンガルー

口から流れる血を拭いファイティングポーズ

その目には闘志が激しく燃え上がっている


答えるように翔もファイティングポーズをとり、近づいて行く

種族を超えた男と男の戦いは始まったばかりだ



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