9回 立花翔、深層モンスター

アイアンボアの体が消え、ドロップ品が出現する

イノシシ肉だった

どうやら予定通り今夜はイノシシ鍋のようだ


「ショウさんあれ」


カナの指さす先には先程なかった扉があり、ゆっくり扉がと開いていた


『深層の入り口だ』

『このダンジョンで深層に行けたやつってこれで3人目か?』

『進むなら気をつけろ、今までとは格が違うぞ』


扉の先からはヤバい雰囲気が漂っており生半可な冒険者だとすぐにこの世とオサラバされそうだ


「ショウさんどうする?下に降りる?」


「いや、ここまでにしよう。流石に守りながらの深層探索は荷が重い」


「そうだね、深層を見れないのは残念だけど、時間的にもここまでの方がいいよね。じゃあみんなここまで見てくれてありが」


「グルルルル!!」


「え?どうしたの?」


ブラッティウルフが今まで見せたことない表情で扉に向かって威嚇している

その異様な雰囲気に当てられたのかカカモンもカナの腕の中で震えていた


『ブラッティウルフが扉に向かって威嚇してる』

『まさか下のやつが上がってくるのか!?』

『やばい、逃げてカナンちゃん!!』


スタッスタッスタッ


何かが階段を上がる音が聞こえ、その姿が見える


「シュ!シュッ!」


それはボクシンググローブをはめたカンガルーだった


「あれ?なんかかわいい・・・」


「シュッ!!」


「危ない!!」


パンッ!!


カナを庇うために前に出た翔

しかし一撃でガードを壊されてしまい、追撃のボディを食らってしまう

たまらず膝をつく


「ショウさん!」


「来るな!!」


『パンチャーカンガルーだ!!』

『ショウがダウンしたぞ!!』

『カナンちゃん早く逃げて!』


逃げるカナだがパンチャーカンガルーはカナを見向きもせず、じっと翔をみていた

その目からは殺意ではなく、早く立ち上がれと言っているようだ


「いいパンチを持ってるじゃねーか」


『まさか立ち上がるのか!?』

『普通は殴り飛ばされてスプラッタな光景になるんだが』

『立て!立つんだショー!!』


ゆっくりと立ち上がる翔にコメントは狂喜乱舞

パンチャーカンガルーも体を温めるようにシャドーをしている

そのパンチは目に見えず、音も置き去りにしていた


「こいつにはこれで相手をしないと礼儀に反するんだよな」


腰にあるポーチから年季の入ったボクシンググローブを取り出す翔

それはパンチャーカンガルーのクローブ

このパンチャーカンガルーのドロップ品にはハズレと言われる物がある


それはパンチャーカンガルーのグローブ

通常装備品は使用者の何かしらのステータスを上げるのだが

このグローブは使用者の拳の怪我を無くすが攻撃力下げ、さらに相手を撲殺してしまわない効果がついている


ボクシングの競技では怪我防止の為に扱うが生きるか死ぬかの冒険者には不要なものだった


「何してるの?」


「こいつは、どういうわけかボクシンググローブをはめて殴り合うのが好きらしいんだよ。だからこいつと戦う時はこれをはめるんだ。あと、これをすると殺されない」


『まじかよ!』

『新発見じゃねーか!!』

『ボクサーとしてクリーンじゃねーか』


上半身の服を脱ぎ、グローブをはめる

その無駄な肉が無い肉体美にカナは顔を真っ赤にし、コメントは盛り上がる


『あいつの体をみてくれ・・・あいつをどう思う?』

『すごく・・・きれいです・・・』

『おい湧くなww』

『てか、今からパンチャーカンガルーとボクシングするのか!?』

『異種格闘技戦じゃねーか?』

『ただし異種は種族の違い』


翔も同じようにシャドーで体を温める

その拳はパンチャーカンガルーと同じように拳は見えず音を置き去りにしていた

そのシャドーをじっと見つめ闘志を燃やすパンチャーカンガルー


「さぁ、やろうか」


体が温まり、左拳を突き出す翔

にやっと笑いそれに答えるように左拳を突き出すカンガルー

両者の拳がぶつかり合い、両者構えをとる

全員がこの場にないゴングの音が聞こえた

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