第20話:商談のゆくえは……?
「一千Gだぁ?」と、思わずといった感じでクローゼさんが声を上げる。
「いきなり話が胡散臭くなったね。何企んでるわけ?」
「いえ、すみません言い方が悪かったです。この値段には理由があって――実はこの商品の有効性を、クローゼさんに実証してもらいたいんです」
「……実証?」
「はい」と僕は説明する。
「実はこの《擬似・火草エキス》、昨日のダンジョンでは作ってすぐに使ったから効果がありましたが、温度が下がったり、時間経過したりすると効果がなくなっちゃうかも知れないんです。他にも粘性が高いから使いづらいんじゃないかとか、手についた時に匂いが残ったりアレルギーが出たりするかもとか、実際に現場で使ってみないとどういう不具合があるかわからなくて……
なのでできれば、現場で《火草エキス》を使っているクローゼさんに実際に使用してもらって、ご意見をいただきたいんです。それを聞いて改良するまでは、《擬似・火草エキス》は一万Gなんて高値じゃ売れません。それでひとまずはこの値段というわけなんですが……いかがでしょうか?」
「ふうん……」と再び鼻を鳴らすクローゼさん。しかし今回はさっきより、やや感心したような気配があった。悪くない感触。
「そういう弱みを自分から言ってくるのは、面白いね。確かに、こっちからすると出所が怪しいものだし、値段が安い理由がわかったのにはちょっと安心した。一万Gだったら普通に買うより安いとはいえ、パチモン掴まされたら黙っていられる金額じゃないしね。自信満々よりよっぽど信用できるか……」
うんうん、と顎に手を当てて考えるクローゼさん。
「ちなみに一千Gって値段はどういう基準? 適当だなんて言わないよね?」
「あ、それは僕じゃなくて、ウォーキンデックスさんが……」
すると横からずい、とウォーキンデックスさんが進み出る。
「素材を買うのにかかった費用と、ゼジくんの人件費を考えて、妥当な金額を考えたつもりです。ゼジくんは試供品だから無料にしようと仰ってましたが、私が反対しました。……これは個人的な考えですが――」
そこで一度言葉を区切って、ウォーキンデックスさんは宣言するように言う。
「技術にお金を払わない人となら、ビジネスをする気はありませんので」
それを聞いたクローゼさんは「んん、なるほどねぇ……」と言って、ニヤリと笑った。
――そして、七日後。
(つづく)
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