第14話:魔道士さんのお願い。
「すみません、気がつかなくて……いまベッドに運びますから、今日はもうゆっくり休んでください! ね!」
そう言って、返事も聞かず僕はウォーキンデックスさんを立たせた。肩を組んで、ベッドルームまでのそのそ歩いていく。肩を組んだ瞬間いい匂いがして、豊満な胸が脇腹に当たったが、それは意識の外へ排斥した。平常心、平常心――。
そうしてどうにか理性を保ちながらウォーキンデックスさんをベッドへ座らせる。寝にくいだろうとローブを脱がせたところで、ウォーキンデックスさんが目を開けた。美しい瞳がとろん、とした光を放っていて、思わず目を奪われていると、こんなことを言い出す。
「あ、あの、ゼジくん……折り入って、お願いがあるんですが……」
「ん? なんでしょう? あ、お水持ってきますか? それともさっきのスープの残りでも――」
「いえ……そうではなくて……その、とても、言いづらいんですが……」
そうして頼まれた『お願い』は、以下のようなものだった。
「私を、その……お、犯して、くれませんか……?」
たっぷり数十秒ほど。
考えてから僕は「へぇ!?」と素っ頓狂な声をあげた。
「な、な、な、なん……え? なんでですか?」
「うう……その……さっきの触手型クリーチャーから助けていただいたとき、私……もう少しでイきそうなところだったんです……」
「うぇ!? は、はぁ……そうなんですかっ!?」
「はい……私、ああいうことってしたことなくて……死んじゃいそうだったのは困ってたんですが、すっごくその……気持ち、良くて……それで、その……かっ、身体がずっと昂ったままで、さっきからずっと苦しくて……」
がし、と手を掴まれる。
「お願いします……ひとりじゃやり方がわからないんです……はしたないお願いなのはわかってます……!」
「うっ、い、いや、でも! さすがにほら、そういうのはちょっと……」
「お願いします! 他に、頼めるような男の人がいないんです……私、ずっと勉強と仕事ばっかりで、彼氏とかもその……いないし……」
そ、そうなんだ……と僕は少し親近感を覚えた。
いや、だがダメだ! そんなわけにはいかない!
第一今日知り合った女の子と、相手が触手型モンスターの手でいい感じに出来上がらせられちゃってるからって、そんなこと……! しかし、情けないくらい僕の身体は正直だった。それを見つけたウォーキンデックスさんは、ぽーっとした表情で、服の上からそれをまさぐった。
「ほら、ゼジくんも苦しそう……」
「う、うう、ウォーキンデックスさん、駄目ですって……!」
だがもうウォーキンデックスさんは聞いてなかった。僕の理性は、ウォーキンデックスさんが唇を重ねてきた瞬間に崩壊した。どうやって服を脱がせたのかも覚えていない。覚えているのはウォーキンデックスさんの、魔導士服より白い透き通るような肌と、揺れる大きな胸、そして救われたように果てる時の気持ちよさそうな赤い顔だ。
ウォーキンデックスさんはよほど興奮していたのか、少し身体に触れるだけでびくびくと肩を跳ねさせた。中を擦るたびに「うぐ」とか「はう」とか可愛く鳴いて、手を握ると握り返してくれた。まるで目の前の相手が全て自分の支配下に置かれているかのような、後ろ暗い背徳感すら僕は覚えていた。その日はいつのまにか眠ってしまった。
そして、朝。目が覚めると、視界には幸せそうに眠る裸のウォーキンデックスさんがいて……そして、視界の端に浮かぶ数字――ユニークスキル・《リジェネレート》の《残機》表示が、変化していた。
『スキル、リジェネレートが発動しました。
残機数が1から2へ増加しました。』
(つづく)
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