第10話:ダンジョンの案内人。
「――っと、そろそろかな」
黒い女の人はそう言うと、タバコを消して立ち上がった。ベルトに挿していた瓶を取り出して、中に入っていた液体を、女冒険者さんを犯しまくっている《
『ヴェッ!!!!』
と咳き込むようにして女冒険者を吐き出した。黒い女の人はそれを受け止め、ぐったりしている女冒険者を座らせる。《愛撫の渦》は咳き込みながらどこかへ行ってしまった。
「あい、お疲れさまー。どうだった?」
「はぁ……はぁ……はぁ……さ、さいこう……」
「ん、そいつは上々。じゃ、帰ったら料金お願いしますね。――それとも延長します?」
「だ……だいじょうぶ……ああ、スッキリしたぁ……」
僕がそのやりとりを不思議そうに見ていると、黒い女の人が「あー」と解説してくれる。
「アタシ、このダンジョンの案内人をやってんだよ。初めて来る人向けに。ここって危ないは危なくてさ。この《火香エキス》って香水さえ使えば《愛撫の渦》から開放されるんだけど、イキまくってるときにこんな瓶開けてどうこうなんてできるわけないじゃん? だからこのダンジョンって、二人一組以上で来るのが鉄則なんだよね。でもこんな趣味、友達とかには言いづらいだろ? だからまあ、結構いい金になるんだよ」
「は、はぁ……ちなみに、開放されないとどうなっちゃうんですか……?」
そのように聞くと、黒い女の人はニヤリと笑う。
「まあ、死ぬだろうね、脱水症状で。隣の部屋の人とか結構やばいよ。見てみ?」
言われた通りひとつ隣の、同じく円形になっている部屋を見ると、そこでは真っ白な服に身を包んだ若い女の子が、先程の女冒険者のようにめちゃくちゃに犯されているところだった。ただし疲弊しきっているのか声はあげておらず、ただ時たま思い出したように、びくびくと体を震わせている。
「ああなりたくなかったら、どうぞ御用命を。これ渡しとくからさ」
そう言って黒い女の人が手渡してきたのは、名刺だ。焼いた布を乾燥させて切った物に、名前と、拠点としている宿屋の名前が書いてある。
「ちょ、待ってください。あの人は助けてあげないんですか?」
僕は去っていこうとするその人を慌てて呼び止めた。黒い女の人の腰には、先程の《火香エキス》の瓶がまだふたつほど挿さっている。
「あの人、あのままだと危ないんですよね……?」
すると黒い女の人は「あっはっは!」と笑った。
「嫌だよ客でもない女に使うなんて。このエキス、結構高いんだぜ? もったいない」
そんなこんなで、ぐったりした女冒険者を担いで、黒い女の人は去ってしまった。薄情な……と思うが、彼女も商売でやっているのだから仕方ないのかもしれない。そう思いながら恐る恐る、さっきの白い服の女の子がいる部屋に入って様子を伺った。女の子は顔を真っ赤にして、ぐったりとしていた。もう何回絶頂を繰り返したのだろう。脚を開いた姿勢で宙空に身体を固定され、真っ赤な顔でぐったりしている。床には何度潮を吹いたのか、大きな水溜りができていた。
「た……助けて……こんな死に方、イヤ……」
そんな彼女の姿を見て、僕の脳裏に選択肢が浮かぶ。それは以下の二択だ。つまり。
助けてあげる? 助けてあげない?
(つづく)
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