【平和の象徴】

文屋治

平和の象徴

 人と云うものは道端や電柱の柱上、電線上等に目をやれば何処かしらに居る、鳩と云う凛々しさとたくましさを羽毛と共に纏った鳥を平和の象徴として謳っている。だが、私にはどうしても此の謳が理解できない。いや、理解をすることはできる、厳密には其の理解の過程に酷く苦しむのだ。

 一方的に住処を奪われ、糧を与えるなと云われ、都合の良い時は可愛がれ、重宝され、都合の悪い時は厄介もの呼ばわりされ、雨風を真面まともしのぐ場所すらない、そして、あまつさえ、路上で息絶えてしまったら容赦なく車に引かれて見苦しい有様へと成れ果ててしまう。

 此れが鳩(若しくは、平和の象徴)と謳われているもの、其の誠の有様である。

 果たして、此れが平和の象徴に対する仕打ちなのか。平和と、其の対である混沌はすぐ傍にあるものなのではないか。故に、私は平和と云うものが恐ろしくて堪らないのです。

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