第17話 ケジメ(3)
「それにこんな薄汚れた男達を始末したくらいで
罪の意識を持つ必要はないでしょう。
恐怖で人を支配して思い通りに人を動かす
だけの怪物、始末されて当然です。
それよりあなたは自分自身と向き合う時間を持ち、
彼らによって奪われた自分の意思をそして
心を取り戻すべきだと、私は思います。」
ホークは起こった状況を理解しつつ
キラービーのメンタルを心配した。
どちらかというと彼女の方が自分の意思を
取り戻し始めたようだった。
それにキラービーの心に蓋をしたのは
イーダではない。
だが今まで自分の(意識の)自由が無かったと
感じるならば、それはやはりイーダに支配されて
いたと言えなくもないだろう。
「心を取り戻すためには光の教団はとても
良いところかとは思いますが?」
ホークは再度提案する。
「いや、何度も言うようにあそことはもう
関わらない。あのバードイーターという男は
どうも苦手だ。二度と会いたくない。」
抑えていても漏れ出る感情があった。
或いは蓋がズレて来始めているのだろうか。
『二度と会いたくないほど嫌な人の為に上司を
殺したの?まあ滅茶苦茶だわ。』
やはりホークは驚いた。
だがキラービーに関することはどれもこれも
例外なく滅茶苦茶である。
「けれどあなたがこのままここを去れば
全ての真相が闇に包まれ、国内は混乱する
でしょう……」
ホークは今後起こるだろうことを思案した。
「『梟』の内部も軍部もとても意見が別れて
います。結託を恐れていた総司令や総統陛下が
互いに疑心暗鬼になるようにかき乱していたため
お互いに何を考えているか分からない状態です
…………」
「せめてあなたがどういう意図を持ってこのような事をしたのか意思表示がされれば、今後残された
者達の動き方も示されてくるのですが………」
キラービーは首を横に振った。
彼女に正義の為の戦いであると演説できるくらいの
指導力と理念があれば内乱を避け、人をまとめる
ことができるかもしれない。
しかしそれは絶望的な願いであろう。
「この国の今後の在り方など、まるで考えて
やれない。すまなく思う。」
「……そうですか………そうですね、いえ仕方
ないことですね、あなたは個人的な在り方さえ
無いものとされてきたのでしょうから……
彼の、イーダの側にいた者にそんなこと
望むべきではありませんでした。
この国がどうなるかはそれができる者が現れる
可能性を待つしかありませんね。」
『やはり梟は優秀だな。』
キラービーはそう思った。
しかしそんな彼女でさえイーダの息子達を御する
ことはできないであろう……
「梟のトップはバタフライとファル…いえ
スコーピオンをほぼ同時に失い弱体化しています。総司令に心酔している者も複数います。
私も信じれる者がいない以上、身を隠さねば
なりません。
このノートがあればここに私がいた事もバレて
しまいますので、このノートは処分します。」
「今回のあなたは極秘任務でその潜入を知って
いる者は鳩くらいでしょう。彼もどこに付くか
分かりません。
…………あなたに聞きたいことはまだ山ほど
ありますが、時間がありませんね。
私は失礼します。
どうかあなたもお達者で………」
「ああ………」
こうしてこの場にいた2人は別々にそこを去った。
それから1時間もしない内に総統の遺体が護衛と
共に発見された。
発見した秘書と側近達はすぐに緘口令をしき、
犯人を探し始める。
イーダにも報せを送ったが、情報統括本部は
関係者以外立ち入り禁止である。
連絡が付かず使いの者が外で困っていると
イーダの息子の長男と三男がそこに現れた。
2人は「お父様に報せる」と言い、
使いの者を外に待たせた。
(イーダは実権No.2なので総統の暗殺は
伝えてよいことになっており、イーダの意見が
待たれていた。)
そして2人は建物内で何が起こったのかを
目の当たりにする。
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