第4話 優太郎と星(1)

 優太郎の家系は由緒正しき名門貴族で、かつては町を代表する家だった。

 この町には大きな港がある。優太郎のお祖父様の時代から、異国人が頻繁に訪れるようになった。偉い異国の人は、お祖父様が建てた水色の洋館で宿泊するのが定番だった。

 私と優太郎が出会う16年前に、事件は起こった。

 輸入業をしていた異国の富豪と、お祖父様が洋館の客間でお酒を呑んでいた。でも些細なことで口論となってしまった。

 異国人は、お祖父様の胸ぐらを掴んで何度も殴ってきた。高齢で病を患っていたお祖父様な、自分よりも若くて大きな体躯の異国人に、命の危機を感じた。

 そして、机の上にあった灰皿で反撃した。当たったのは右側頭部。打ちどころが悪く、相手は一発で動かなくなった。


 お祖父様の弁護士は、正当防衛を主張したけど認められなかった。


 時期が悪かった。

 当時、この国は相手の国よりも弱かった。政治的にも、軍事的にも。

 あちらの国民たちは怒り狂い、偉い人は最も重たい罪を求めてきた。


 結果、相手側の言いなりになった政治家たちによって、お祖父様は死刑となった。死刑は驚くほど早く執行されたけど、この町は異国人殺しのイメージが付いてしまい、しばらくは国内外から非難を受けたそうだ。


 優太郎の家は取りつぶしになった。財産のほとんどは没収、結婚と子孫繁栄は禁じられた。

 彼は残された一部の財産と、遠縁からのわずかな支援で暮らしている。

 誰とも関わらず、ひっそりと。


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