第五章

第25話 正月飾りを浄火するために神社へ

 正月が過ぎ、僕は初詣とは別件で神社へ向かっていた。内山と行ったあの神社ではない。地区というより、市内でも大き目の神社だ。さほど遠いというわけではない。どんな用事なのかといえば、その神社ではお焚き上げをしているのだ。去年までは荷物持ちには僕がちょうどいいらしく、大家さんにつき従っていたが、今年は違う。年末年始の飾りつけは、住居人のためだと言いつけられていたので、やらないわけにはいかず、念のためというよりもレポートや卒論の参考になるかと思って写真を撮っていたのが功を奏してアンバランスなしめ縄になることもなく、その他の縁起物を供えることが出来た。それら正月の飾りを取り外してゴミ箱にポイとは習ってない。神社の浄火に。これもまた年中行事である。僕としても面倒でどうしようもなく逃避したいわけではない。それに飾りといってもしめ縄と下げ紙、こぢんまりとした松など少し大きめな紙袋に収まるほどだ。僕一人で行くつもりだったのだが、なっちゃんさんは手伝いと言って僕について来てくれた。その時期としては珍しく乾いた晴れの日、浮き立つ気分で出かけたのだ。

 午前八時。神社の駐車場の一部を囲い、その中心には組んだ竹があり、枝には短冊などが括りつけられていた。とはいえ、すでに燃え始めており、数人たちは合掌をしてその炎に飾り物を放り投げては、参拝に向かっていた。だから、その人数は僕の視認よりはもっと多かったのだろう。現に正月の飾り物の数々が、灰になっているものあるが、まだその形を保って燃えていた。

 参道に沿っては出店もある。綿あめややきそばやたこ焼きや今川焼や、ほぼ食べ物関係だった。食欲はもう満たされていたが、かぐわしさは唾を口の中に湧かせる。とはいえ、優先事項を片してからである。

 囲いの側まで行くと、見知った顔があった。内山である。年明けすでにラインで送受信していたので、新年のあいさつは割愛。僕となっちゃんさんは合掌してから持ってきた飾を入れた紙袋をゆっくりと放った。

 一方、

「大学生は暇なんだからとか言われてさ、持ってけって、まったく。就職も決まったからって、お年玉もなかったしよ」

 言い切ると、不満を代わらせるように、手にしていた紙袋をぞんざいに火の中へ抛った。炎が紙類を侵食し灰にしていく。

「おい、もっと丁寧に」

「あー、はいはい。んじゃ、俺行くわ」

 民間伝承を扱う学問に携わっているとは思えない行いの内山が囲いに背を向けると、炎が勢いよく立ち上った。

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