第13話 あれよあれよという間に風間ペースで大学へGOとなってしまった


 大学のエントランスに入った。僕一人ではない。後ろには、興味深そう吹き抜けの天井まで見上げているなっちゃんさんと、ニコニコとまったく周囲を気にも留めてない風間さんがいる。三人で僕の通う大学に来ている理由は一つしかない。あの件に関する事後処理とも言えない、惰性的同行である。


 風間さんが闖入してきた翌日、台風で被害を受けたあの社に行った。僕らのほかには誰もいなかった。もともと無人の社だったけれども、他の神社から宮司が来て祭りを行うことはあった。参列者として地域の住人もいたのだから、そういう人たちが被害の様子を見に来ていてもおかしくないはずだが、よく考えなくても台風直後とか今日の午前中とか来ていただろうなんてことは容易に想像できる。

 デジカメでいたる箇所を撮影し、タブレットに何かを打ち込んだり検索したりしていた風間さんはやはり保険屋さん的な業務にしか見えなかった。なっちゃんさんはゆっくりと散策みたいにしていた。ただそここことキョロキョロして落ち着かないように見えた。僕といえば、以前来た記憶とあまりに違っていてほぼぼんやりと立ち尽くしていた。風間さんに声をかけられて時計を見れば来て四〇分ほどが経っていた。なっちゃんさんも立ち止まって屋根を見つめていた。風間さんは一体なっちゃんさんに何の用事があって同行させたのだろう。現地調査が終了し、もう帰るのだろうと思っていると、

「清水君さ、今度君の大学へ連れて行ってよ」

 文化財価値の確認に資料を漁るというなら勝手にどうぞなのだが、

「いま大学祭の準備で落ち着きないですよ、慌ただしいのでこれ以上面倒事を押し付けないでください」

 一応年上なのでやんわりと断った。ところが、

「清水君、サークルとか入ってなかったでしょ。なら準備とか関係ないでしょ。それにまだ夏期休暇でしょ、人目とか気にしなくていいでしょ。つうわけで、あー土曜日しか空いてないか。つうことで今度の土曜日に」

 勝手にアポイントメントとスケジュールを押えられた結果、当日になったのだ。

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