第7話 今頃夕食?

 帰宅したのは二十三時を回っていた。居間の灯りがついていた。なっちゃんさんが飲んでいるのは予想がついた。居間に入ると、

「おかえり」

 なっちゃんさんはやはり飲んでいた。芋焼酎をロックで。僕が不思議に思ったのは、食べ終えたばかりにテーブルに置いてある食器だった。僕の帰宅が遅くなる時には事前に夕食の準備はしておくのが通例で、この日も朝のうちに夕食用のぶりの照り焼きと野菜炒めとみそ汁を作っておいた。レンジであっためて、さすがに味噌汁は温め直して、ご飯もジャーを保温にしておいてよそえばいいだけにしておいたし、キュウリの味噌漬けは小皿に切り分けて冷蔵庫に入れておいた。それらの食器があったのだ。夕食はほぼ十九時にしているから、その時から放置なのか。単に遅く食べたということなのだろうか。

「今日ってバイトでしたっけ?」

 なっちゃんさんはバイトがあると夜遅く帰って来た。けれど、その日は事前にバイトがあるとは聞いていなかった。風呂上りでもあったのか首にはまだバスタオルをかけていたし。

「そうだね、バイト。急だったから。あ、私が洗うよ」

 皿洗いも僕が行っているのだが、

「お風呂入ってきたら? まだあったかいままだろうし」

 ほんのりと赤い頬になるくらいにすでに飲んでいたせいか、いつもよりなっちゃんさんは早口だった。僕はすでに空き時間に空腹をおにぎりによって紛らわせており、おかず類もなっちゃんさんの分しか作ってなかったから、遅い夕食はなかった。何かを食べるよりも、実際風呂に入ってあの記憶ごと洗い流してしまえたら、と思わなくはなかった。なんて言ったって、まったくの真実全てを供述したわけではなかった。偽証罪とかになったら、どうしようかと不安がないわけではなかった。僕はなっちゃんさんに皿洗いを任せて入浴することにした。

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