サラ、黒幕達をざまぁ展開へと突き落とす。
「く、くるなー! …あ、いや、こ、こないで!!」
「な、何故ですかフランチェスカ様!? 昨日はあれだけ尽くしてくれたというのに、急に今日になって『受け入れられない』などと…!」
まずはフランチェスカ。彼女(心はロザリオ)は侍従達の部屋へものを取り行ってから暫くして、顔面蒼白で部屋から飛び出してきた。
その後を、すぐにとある侍従の1人が困った顔で出てきたのだ。しかも、上半身裸で。
「この汚れなきフランチェスカの体に触れようだなんて、あなた達を… わた、いや、ロ、ロザリオ様に言いつけますわよ!」
「な、何を仰るのです!? だってこれからする事は、陛下をはじめ誰にも内緒だと! そもそも『私の身を捧げるから、何でも言う事を聞きなさい』と! 先日も『あの女の事務所に保管されている顧客情報を、本物とすり替えなさい』と申したのはあなたですよ!?」
「はぁ!? う、嘘だ…! あ、あのフランチェスカが、そんな淫らな行為を…!?」
――なんですって? やる事が犯罪じゃないの。
サラのこめかみから、僅かに血管が浮き出るのを実感した。
話の内容からして「あの女」とは間違いなくサラの事を指していると思われるが、それ以前にあのフランチェスカという女は、第一王子のみならず複数の侍従を従わせていたようである。それも「淫行」という手段で。
さて、その事を王室に内緒でしていたというなら、もしもこの事をあの第一王子が知ったら一体、どうなるのだろう? 続けて、サラはロザリオの様子を見に行ってみた。
「ま、まさかそんな…! あ、あの人が、いや第一王子が、私… ううん、フランチェスカを独り占めするために、お父様たちを殺そうだなんて!!」
ロザリオ(心はフランチェスカ)も同様、オバケでも見たかのような表情で、部屋を飛び出してきた。その後を、今度はまた別の侍従が姿を現し、こういう。
「失礼ですが殿下。先週、そのような計画を確かに我々に命じられました。サラ様についても、親が厳格で好き勝手にできない彼女を、ご親族の耳に知らされる前に急いで城から追放し、『オオカミに食べられた』という事にして、数人の殺し屋に処理を依頼するとも」
「ひぃ…! そ、そんな恐ろしい計画を、この、ロザリオが…!?」
――やっぱり! この男も男だ。結婚しなくてよかったー。
サラは確信した。自分が2週間ではなく、たった3日で死ぬ運命に遭う理由が判明した。
やはり、あの第一王子の独断だったのか。通りで、本来ならサラがまさか3日後に追放されるとは知らず、国王の言葉を信じのうのうと過ごしたわけである。
だが、これで大いに勝算はついた。
すべては、自分が2人に気づかれぬよう発現させた「相手と相手の心を入れ替える力」のお陰だ。お互いが知らなかった「悪しき裏の顔」に気づいてしまってからが本番である。
「はいはい、お遊びはそこまでよ! さぁみんな、見てみなさいこの悲惨な姿を!」
サラは内心、楽しんでいた。
あの男女2人の悪行には最初こそ怒りを覚えたものの、その計画が一気に崩れていく様を見ていると、もう面白おかしくて仕方がない。そして、その瞬間をより多くの人と味わい、今度は自らを有利な立場へと持っていかせるため、サラは手拍子をした。
すると、幾つもの部屋から、ほか侍従やメイド、その他王室関係者が何事かという表情で、ぞろぞろと顔を出してきた。深夜なので、不機嫌な思いをした人も多い事だろう。
国王が顔を出すのも、時間の問題である。すると、例の2人が再び広場で顔を合わせた。
「あー! わ、私の体がぁー!!」
「そ、それはこっちのセリフだ! な、なぜこんな事に!?」
と、お互いを指さす第一王子とヒロイン。サラはまってましたとばかり前に乗り出した。
「あら、2人とも何をおかしな事をいっているのかしら? こんな夜中に大声で騒いでいるものだから、何事かと目が覚めてしまったじゃないの」
「な!? サ、サラ! なぜ君がここに!?」
そういいだすロザリオ、否、体はフランチェスカ。
あのヒロインがそんな態度でサラを名指しする姿など、侍従達にとっては初めてで、予想通り周囲がざわめき始めた。サラが、丁度近くにいたクララにこういう。
「クララ、今から西の侍従寝室2号室を見に行ってきて。そこから、我がエンドリヒ宝飾ブランドの書類や物品を全てかき集めてくるのよ」
「え…」
「はやく!」
悪女の目が鋭い。その姿に怯んだのか、クララは急いでその場から走り去った。
引き続き、サラは悪意に満ちた微笑みを浮かべながら、事の顛末を告げた。
「ところで、さっきお2人の会話が聞こえましたの。なんでも、そこの令嬢は男のみならず、私からも名誉を略奪するため、ここの侍従たちを体で従わせていたそうじゃない」
「ひっ!」
「それに! そこの第一王子も、この女の家族を皆殺しにして孤立させ、この王宮から逃げられない立場にするつもりだったんでしょ? 自らの欲望のはけ口にしたいが為に」
「なっ!」
周囲から僅かな悲鳴と、後ずさりする音が聞こえてきた。
そんな状況の中、2人はハッとなり、拳を震わせながら互いを睨みつけた。
「フ、フハハ… フハハハハ! そうだよ。こっちはもう、君のような勘の良い女にはウンザリしていたからね! だから、君より単純な女を我がものにしたかったのに…! こんな…! こんな汚らわしい女だったとはな! 何が純潔だ! このアバズレが!」
「な、なんですって!? あ、あなたこそ、まさかお父様たちを殺そうと計画していたなんて! い、いくら皇太子妃という素晴らしい身分を得られるチャンスとはいえ、相手がそんな恐ろしい方だとは思ってもいなかったわ! 結婚は破談よ! この裏切り者!」
「なんだと!!?」
「やめんか! ロザリオ! そして、フランチェスカよ。話はしかと聞かせてもらったぞ」
国王の声だ。サラが安堵のため息交じりに腰を低くする。
周囲が、一斉に静まり返った。この国のトップが険しい表情でかけつけてきたのだ。
そして、別の方角からは…
「サラ様! 部屋から、こんなものが」
先程、命令されてこの場を離れていたクララが戻ってきた。
見つけてきた物品をサラに手渡し、急いで国王に向かって腰を低くする。
それら物品に目を通したら、案の定だった。
「これは… 事務所から突然消えた成功報酬の証明書に、医療費の領収書、私の役員続投を求める署名まで! こんな身近な所に、隠されていたなんてね… さて。これは一体どういう事か、説明してもらえるかしら? フランチェスカご令嬢と、その相手をした侍従たち」
「「ひぃ…!!」」
周囲が、再びざわめき始めた。真の悪事が次々と暴かれたからだろう。
するとそれらが動かぬ証拠となり、国王の拳が怒りで震え出した。
「通りで、おかしいと思ったのだよ。ブランドの業績悪化が誠なら、先にエンドリヒ会長から説明があるはずだからな。なのに、ロザリオの勝手な婚約破棄といい、証拠の隠蔽や捏造といい…!」
「ち、父上! これは、誤解です!」
「そ、そうです! これには深~いワケが!」
「たわけ! お前達のせいで、ジュリオの医療費すらまともに行き届かず、治るはずの病気も治らない状態が続いているのだぞ!! それを、自らの肉欲を満たす為に、サラご令嬢に濡れ衣を着させおって…! このバカ息子どもが!!!」
「「ぎゃあぁぁぁー!!!」」
(つづく)
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