第5話 手の震えが出るほどに食べたいラーメン

 もうマジで何が何やらわからんうちにメンバー入りしていたので、『協調性0のコミュ障をメンバーに加えるとこういうことになるんだぞ』ということを主催者に知らしめてやろうと思って頑張って書きました! 


***


 通話が終了し、しばしの沈黙が流れる。


 ちょっと状況を整理してみよう。いまわかっているのは、俺が何かしらのヤバい組織に目をつけられていたということと、そして、捕獲されたらしい、ということ。そして、さらに『第二部』とやらが始動し、誰かがこちらに来る、ということだ。うん、整理してもアレだ。全然わからねぇ。もうここまで来ると、火炎放射器で頭を燃やされていたあのハゲ警官のくだりとかあんなのもう前菜ですらねぇわ。本日の厄災メインディッシュはこちらでしたか。こちらでしたか、じゃねぇんだよ。もう自分で突っ込むしかねぇわ。


 とはいえ、さすがに五分十分で来るわけではないだろう。何か隙を見つけて逃げ――、ってここは俺の家なのに俺が逃げんのかよ。出来ることなら(とてもとても残念ではあるけれども)この幼女(で良いのかなマジで)のしのぶを追い出す方向でどうにかしたいのだが、果たして叶うか否か。


「あの……、腹空かない?」

「何? 早速鉛玉を召し上がりたいってことかしら?」

「ちょっと、全部そっち方向に持ってくのやめてよ。そうじゃなくて。これから何が始まるのかわからないけど、腹が減っては何とやらって言うじゃん。いざって時に腹の音が鳴ったら締まらないんじゃない? そっちもさ」

「一理あるわね」


 よ、よし。乗ってきた。


「それでさ、冷蔵庫にあるもので俺が適当に作ってももちろんいいんだけど」

「あなた、得意料理は?」

「えっと……ちゃ、チャーハンとか」

「パラパラに出来る?」

「そ、それはその時の飯のポテンシャルによるとしか」

「話にならないわね。トッピングは薬莢で良い?」

「ちょちょちょちょ! 話を聞いて! 俺が作っても良いんだけど、実はこの近くにめちゃくちゃうまいラーメン屋があるんだって!」

「ラーメン?」

「そう! もうすっごいの! Xwitterでもめっちゃ紹介されててさ! あっ、俺もフォローしてる人なんだけど、聞いたことない? 『営業中師範』って人! ラーメン界隈じゃあかなり名の知れた人なんだよ! その人が推してるラーメン屋があんの!」


 俺の必死のプレゼンに、しのぶは、すぅ、と目を眇めた。疑っている。こいつ、うまいこと言って、外に出た瞬間に逃げる気ね、そう考えているに違いない。でも、ここで引くわけにはいかない。


「いや、わかる、わかるよ! 外に出るのは駄目だって! うん、いま人を待ってるところだもんな! だからさ、出前! 出前を頼むのはどう? それなら良いだろ? 俺、一歩も出ない! しょっちゅう利用してるから、お店の人もウチわかってるから! 『近くまで来てるんですけど~、ちょっとわかんなくて~』とか言われて、『あっ、それじゃ一旦俺外出るんで~。いまどのあたりですか?』ってことにはならないから!」

「何か必死だな、お前」

「それだけそのラーメンが食べたいんだよ! お願い! ね? ほら、もう食べたくて手が震えてきた! 欲してるんだよ! あの背脂を! 濃厚なスープが絡むちぢれ麵を! 絶対にしのぶも食べたら病みつきになるよ!」

「そんな禁断症状が出るなら逆に食べたいとは思わんがな。大丈夫か、その店。何かヤバいもの混ぜてないか?」

「混ぜてない! 混ぜてないよ! 純然たる店主のラーメン愛だよ!」

「定期的に摂取しないと手の震えが出るラーメン愛って何だ」


 ごもっともすぎるが、もうここまでやっちゃったら貫き通すしかない。きっとラーメンの世界には、そういう愛だってあるはず。


 俺の必死さが伝わったか、しのぶが、やれやれ、といった顔で首を左右に振った。そして、窓をちらりと見、「そこまで食べたいんだったら仕方ない」と言った。やった、勝った! あとは出前の人からラーメンを受け取る時にどうにか逃げるか、あるいは通報してもらうかすれば良い。


 ホッ、と胸を撫で下ろしていると、しのぶは、注文のためにだろう、俺にスマホを向けながらこう言った。


「悪いが、三人分にしてもらえるか?」

「え? 三人、って」

「ヤツが来た」

「は? もしかしてさっきの電話の――」


 と、玄関の方を見た。そして、もうすぐ鳴らされるであろうチャイムを待っていると。


 ガシャーンッ!


 窓ガラスが景気良く割られ、ホッケーマスクを被った長髪の女性が室内に侵入してきた。


「方向音痴過ぎて部屋番号がわからなかった。しのぶが見えたから、ここから入ろうって思って」


 悪びれることもなく、そんなことをさらりと言い、使いこまれ度が半端ないナタを鞘にしまう。成る程~、あれで割ったのね。


 いやいやいやいや! 銃刀法違反でしょ! それを言ったらしのぶもだけどさ! えっ何? ここ日本だよね? 日本の話だよね?!


「というわけで、ラーメンは三人分だ。餃子も忘れるな」


 えっ、この状態でラーメン食える人間って存在するの?


***


 ね!


 私をメンバーに加えるとこうなるんだからね?


 出勤前の1時間で書きましたよ!


 ちなみに『営業中師匠』をズバリ出して良いのかわからなかったので『営業中師範』にしました。どっちでもいいです。判断は任せます。Xwitterはどう読むのか私もわからないです。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る