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授業は進む。そして周囲を見渡すと教師の進度に従順に従う者、進度なんて無視して青い問題集を出す者、特に地理的に近くてレベルの高い大学の過去問を常備している者もいる。私は教師の進度に従順なタイプだ。予習なんて面倒だし、別に向学心も向上心もある訳ではない。「それなり」だけが私の行動基準。入試の時に大学に合格できる程度の学力があればいいからそれ以上をしないのだ。
こんな私でも明確な目標がある。ここでは詳細は割愛するがその目標を達成するには某学科に行かなければならない。供給過多で切られる程度のレベルでなければ別に私大でもよいのだが、親から学費に難癖をつけられたため、近所の大して有名でもない国公立大に行くことにした。そこに合格できる程度の勉強をすればいいだけ。それ以上の勉強をする理由なんて何一つ存在しないのだ。
私のクラスでこんなに意識低い系の生徒なんていないだろう。私の高校はレベルの高い順に特進Sコース、特進コース、進学コースがあって、さらにそれぞれ文理に分けられる。こんな私でも学内では1番レベルの高い特進Sコースの理系に属しているのだ。周りは学内で見てもかなりレベルの高い者が多いと思う。その分、空気が張り詰めていて窒息しそうになる。しかし特進や進学に多く生息する、自分の学校を自称進学校呼ばわりして、事あるごとに「教師が悪い」とか「参考書が悪い」とか言い、模試で特定の教科の特定の問題が解けたとか自慢しながら自分の苦手科目を棚に上げる”自称”受験生は私のクラスにはいないように感じた。それでもネットとかでは、私みたいな無気力タイプより”自称”受験生の方が迎合されるのだから不思議なものだ。
さて、私のクラスメイトはと言うとK大学理学部や工学部を目指している者が多い。少しレベルを下げたO大学の同じような学部を目指している者もいる。ある時、私はクラスメイト達の模試の志望校判定を覗き見したことがある。私は特定の学科志望なのだから当然それ以外の学部学科の判定を出すことは無いのだが、クラスメイト達は同じ大学のバラバラな複数の学部の判定を出していた。
他にも職員室に入ると、他クラスの生徒とその担任が面談をしていて、「○○大学は××学部より△△学部の方が入りやすいから……」というような会話が聞こえてくることもあった。
本来、将来の明確な目標を持っているのなら大半の人間にとっては大学名よりどの学部学科で何を学ぶかの方が大事になるはずだ。将来の目標があれば、その時点で学部学科はある程度決まるか確定される。それなのに、難しいからと目標の学部学科を簡単に諦めて大学名というガワだけに固執するのであるから、彼・彼女らは将来性や計画性なんて何一つ持ってないのだろう。文理選択を途中で変える者もいるそうだが、そんな奴らは特にだ。
そして高校や予備校やネットはそれを是とするのだから、社会の受験生像と呼ばれるものは、際限無く勉強して目標の大学を目指す「大学名絶対固執将来性皆無人間」なのだろう。その時点で「それなり」にしか勉強せず大学名にあまり固執しない私は理想的な受験生ではない。受験不適合者という言葉がお似合いだろうか。
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