第12話 絶望的拒絶?

僕は車で帰られて

声を掛けられなかった翌日から、


彼女が車を止めた駐車場が見える

窓のある学習室の席を取る事にして

定期的に車の有無を確かめながら、

今まで通り見廻りも行い、

彼女が訪れるのを待った。


元々、車で訪れる人は稀なので

徒歩や自転車での来館をチェックするより

時間的束縛も減り楽になった。


翌日は、現れなかったが、


翌々日の午後、彼女が前に止めた所に

同車種・同色の車が止まった。

僕は直ぐに彼女とすれ違うべく

学習室の席を立った。


「拓也、彼女の車ぽいの来たから見て来る」

「おっ、本当に来たのか良かったな、今日こそは、声掛けられるのか?」

「声掛けられるかは分からないけど、

 挨拶ぐらいは出来ると思うから行って来る」

「頑張れよ、次の機会なんて有るか分からないんだから」

「頑張るから、拓也上手く行く様祈ってて」

「おう、祈ってるぞ」


彼女とは、図書館を出てすぐのピロティですれ違った。

すぐ横を通る際、小声で「こんにちは」と言ってみた。

それが、僕に出来る精一杯の事だった。


彼女は何も聞こえないかの如く振り向きもせず、

足を止める事もなく通り過ぎていった。


蒸暑い日だったが、彼女が通ると

周りには涼やかな風が流れる気がした。


「どうだった、挨拶ぐらいできたか?」

「挨拶したけど完全にスルーされた」

「完全スルーか、きついな 聴こなかったじゃないか?」

「すぐ横だったから聞こえてないって事はないと思うけどな〜」

「でも、ゆき、それおかしくないか?

 いくら急に挨拶されても聞こえてたら誰なのか確かめるよな?

 知合いの場合だってあるし、吃驚したら足だって止めるし

 逆に完全スルーする為には、予め心の準備が必要じゃねぇ?

 俺だったら、そうだけどな〜」

「確かに!俺もそうだ。完全スルー出来るのって

 予め、そうするって決めてる時だけだな

 でも、だとしたら彼女は予め俺とすれ違う事に気付いて

 話し掛けられたらスルーする事決めてたって事かよ?

俺、絶望的じゃん!拓也」

「う〜ん、けど、そんな事あるか?全然知らない赤の他人に?」

「そうだよな〜訳分かんないよな」


僕らは暫く理由について考えたが、何も思い浮かばなかった。


拓也は受験勉強に戻ったが、

僕は何時間もその事について考え続けた。


見かねた拓也が

「彼女って学習室に居るんだよな?

 二人でさり気なく様子見に行ってみるか?

 どうせ勉強なんて手に付かないんだろ?」

と言ってくれたので、彼女の席のそばに行って

二人で小声で会話をしてみた。


彼女は、すぐに気付き

こちらに向かって微笑んだ、僕にはその微笑みは、

僕に向けられものに思えた。


それは拓也も同じ様に感じた様で

僕らの席に戻ると早々に

「ゆきに向かって微笑んだよな、本当に知人じゃないのかよ?」

と聞いてきた。


「いや全然知らない人だって、あんなに可愛い子を忘れたりするもんか!

「だよな〜俺だって絶対忘れないよ、あの可愛いさで、あの笑顔

 じゃ何で挨拶に無視したり、逆に微笑んだりするんだろうな?

 訳分からん!」

「本当に訳分からないよな〜俺に微笑んでくれた事は嬉しいけど」


僕は再び熟考に入った。


「ゆき、考えたって分かる訳無いんだから、帰る時にまた挨拶してみろよ

 嫌われるほど知っている筈も無いんだし、微笑んで、もらえてるんだから

 恐れる理由も無いよな?」

「そうだな、そうするよ!」

「だったら彼女が帰る時まで勉強しろよ、席を立ったら分かるだろうから」

「ok!そうする」


僕は、そう言って受験勉強に戻ったが

勿論、勉強に身が入ることはなかった。












 















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