第10話 デジャヴュ
再び会えた、その日の午後
僕は話しかける機会も勇気も得られないまま
日が傾き始める図書館にいた。
微笑みかけられたのは、自分だという確証も持てず、
なんて話しかければいいか、まるで思いつかないまま
時は過ぎ、閉館時間が近づいていた。
「ゆき、あの子帰るみたいだぞ、いいのか?」
「ちょっと間を置いてついていく」
僕は、図書館を出たピロティに置いてある自転車の鍵を外したり、
荷物を入れたり、少し時間がかかるだろうから
その際に話しかけるのが良いと考えていた為、
そこで追いつくペースで少女を追いかけた。
ところが、少女は駐輪スペースで止まらない
それどころか、敷地の出口とは反対方向の駐車場に向かって行く
僕は戸惑いながら追いかけるが、追いつかないうちに
少女は、何と車に乗り込んだ。
僕は、すれ違う車を見送った。運転席には、少女が乗っていた。
呆然と立ち尽くしつつ、
僕は以前にもこんな光景を経験してる既視感に捕らわれた。
急に蘇った記憶の場面は、小学生の低学年時
近所の書道塾をやっている友人の家で塾から出てきた
中学生ぐらいの女の子とすれ違った瞬間、不思議な感覚に捕らわれ
ふらふらと、その子後を追ったが追いつけず呆然と立尽くした光景だった。
それはまだ異性への興味など覚える前の年齢の出来事で
見知らぬ女子中学生を追うなんて今考えれば異常な行動だったが、
その高校3年の夏まで思い出すこと事さえなかった。
だが一度蘇った記憶は、その日の車で走り去った少女の記憶と共に忘れ難く心に残り
再び消える事はなかった。
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