第5話 不審者

その少女と出会って1週間程たったころだと思う。


図書館にいる僕と拓也のところに崇がやってきた。


「ゆき、俺さ やっぱりここで受験勉強してる

中学の同級生の女の子に呼ばれてきたんだけどさ」


「へぇ~よかったじゃん、可愛い子なの?」


「いや、そういうんじゃなくてさ」


「じゃ何?」


「その子達が言うには、勉強してると頻繁に巡回してくる不審な男がいて

話からして、富高の受験生じゃないかってことになったらしくて

俺が呼ばれた。」


「へぇ~大変だな、それで?」


「その不審者って、お前だって!」


「えっマジで!なんだよ不審者って、お前なんかに興味ないって言っとけよ!」


「何だよ、その言い方、俺の友達なんだぜ」


「そうだぞ、ゆき 実際、頻繁過ぎるって言ったろ、怪しんだって

それにその子達の誰かが、あの子だったらどうするんだ?」


「そうか~毎日見てた拓也が言うんじゃ怪しいのかもなあ

確かにその子達の誰かが、あの子って可能性もあるよな

だったら、逆にラッキーだよな崇に聞いてもらえるし」


「崇、その子達どこいるの見てきていい?」


「分かれた学習ブースの入り口のところ」


僕は確かめに行った、やはりあの少女ではなかった。


「崇、やっぱりあの子じゃない」


「あの子、あの子って、二人の言うあの子って一体なんなん?」


「いや、ゆきがさ、夏休み初日に見た女の子に一目惚れしちゃって

天使だ、妖精だってのぼせ上がって

毎日、その子が来ないかチェックして廻ってるんだよ

全然、勉強なんか手についてないんだぜ、実際、怪しくも見えるって」


「へぇ~そんな可愛いのかよ?ゆき」


「マジ、天使♪」


「そぉ~か、来たら教えろよ 拓也は見たの?」


「俺は、見てない。実在するかも疑問だよ」


「なんだそれ、ところであの子達誰かが、不審者だって言いながら

お前達のどっちかに興味あるみたいで

二人の名前教えろって言ってるんだけど、どうする?」


「俺はパス、でも怪しまれてるのも嫌なんで、他の子探してるって言っといて」


「拓也は?」


「俺もパス、崇の友達なのに悪いけど、あの子達何回か見かけてるけど

あまりいい印象ないんで」


「そっか~俺もそんなに親しいわけじゃないから気にするなよ」


「そうだよな、崇が興味あったら、こんな悠長にしてないよな」


「そう、俺はお前らみたいな文科系・草食系じゃなく

体育会系・肉食系のハンターだからよ」


「崇には、あの子見せられないな」


「そう言わず、来たら教えろよ俺も見てみたいからさ」


「今日来るといいのにな~」


「ゆき、もし来たら本当にわかるのかよ?一回一瞬すれ違っただけだろ、

もう来てるのに気付かなかった可能性だってあるよな」


「いや、もう一度会ったら俺には絶対わかる」


「本当かよ、」


拓也は信じなかったが、僕には確信があった。


しかし、この日も少女は現れなかった。

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