第56話 勇者の証?

―― リズ視点


 朝のホームルームが終わり、ステーシア先生が教室を出て行った。


 私は席を立ち、アリサさんに話しかけた。


「アリサさん、今日の先生、クイーンのお姉さんでした」


 アリサさんは驚いたようだ。


「パパはどうしたの? 伝言はないの?」


「今、ちょうど、どんどん伝言が来ているところです。リスベニという町にサーシャさんと一緒に向かっているそうです」


「サーシャといっしょに!? あの子、抜け駆けばかりねっ」


「ダメですよ、アリサさん。私たちが争うと、おじさんの機嫌が悪くなります」


「そうだけど、パパと旅行だよっ!?」


「今回はおじさんがサーシャさんの命を守るために決めた行動のようです。二人で悪魔を倒しながら、移動しています。昨夜は二柱倒してます。鑑定したら、私のレベルが18000超えてました」


 アリサさんも自分自身を鑑定したようだ。


「本当だ。じゃあさ、アリサたちもサーシャの命を守るために行動しようよっ」


「はい、もちろんです。どうやら、おじさんは院長に会うみたいです。私たちもリスベニに向かいましょう。高速馬車をプリシラさんに手配してもらいます」


「うん。じゃあ、アリサは学園に休暇届を出しに行くね」


 私たちは素早く手配を整え、プリシラ王女が用意してくれた高速馬車に飛び乗った。


「そう言えば、聖女入替戦のあと、プリシラが何度も『私たちビジネスパートナーよね』と念押して来て笑ったよね」


「サーシャさんのアレを見たら、敵にはなりたくないですからね」


「昨日の夜は、サーシャとパパは同じ部屋に泊まったのかな」


「たぶん。おじさんはイメルダ先生に憑依しているそうです。別々に泊まる理由ないですね」


「サーシャ、いいなあ」


「あ、でもですね。寝る時は憑依を解くんです。おじさん、眠らないですから。お家でも、夜中はクイーンのお姉さんにじっと見張られているって愚痴ってました」


 おじさんは読唇のスキルがあるが、クイーンのお姉さんにも授与したそうだ。夜中はクイーンのお姉さんとお互いイリュージョン姿になり、読唇術と筆談を駆使して意思疎通しているそうだ。 


「リズはパパの話をいっぱい聞けていいね」


「すいません。おじさんの愚痴が長くて、愚痴はほとんどメモってないのです」


「でも、一方的に愚痴を聞かされるって、いくらパパからでもそれは嫌かな」


「ええ、正直、しんどいです」


―― ボーン視点


 リズたちが追いかけて来ているとは露知らず、俺とサーシャは、湖のほとりの城に住んでいる貴族と対峙していた。侯爵級の大物悪魔アザゼルだ。


「ご婦人たち、何用かな」


 アザゼルが憑依している貴族は、ロマンスグレーのダンディな男だ。俺の前世もこれぐらいの毛髪量が欲しかった。


「神の御霊のお導きをサーシャ・サトゥがお願い奉ります」


 アザゼルの顔色が変わった。


「何だと!? ホーリー!?」


 サーシャが何の前触れもなくホーリーを唱え出すのが俺たちのやり方だ。悪魔と話しても碌なことがないからだ。


 ホーリーは神の力を借りて発動する魔法で、対象を神に見せながら唱える必要があるため、敵を目の前にしないと唱えることが出来ない。だが、「サトゥ」という適当な名字を勝手に名乗って、神のお咎めがないのが不思議だ。


 俺はこの世界では名字がないのだが、サーシャが名字を教えてくれとうるさいので、前世の「サトウ」を名乗ったらこうなった。サーシャは「サトゥ」としか発音できないので、かなり古いが「欧米かっ」と心の中で突っ込んだのは言うまでもない。


 心を込めて神に祈る必要があるため、早口で唱えることはできないが、レベルが上がってくると、いくつかの言葉を省略できるようになる。そのため、ミントの聖女は呪文の終了まで一分かかるが、サーシャは三十秒もかからない。


 アザゼルはサーシャに向かって魔法を乱発して来たが、俺が間に入って、魔法を全て受け止めた。デュアルで分裂して、分身から攻撃魔法も放った。アザゼルの憑依しているのは男なので、どうなっても構わない。


(そのロマンスグレーを燃やしてやるぜっ)


 アザゼルは物理攻撃も仕掛けてきたが、これも二体のシスターボーンですべて対処する。


「女、邪魔だてするか。っ、貴様、何でこんなに強い!」


「ホーリー!」


 サーシャの可愛い声が後ろから聞こえると、俺はすぐにデュアルを解き、俊足でサーシャの真後ろに移動した。


「な、詠唱が短か過ぎる……。ぐおぉぉぉ」


 サーシャのホーリーは巨大で、かつ、威力がすごい。アザゼルの足元から青白い光が半径五メートルの円柱となって天に昇って行くため、逃げようがない。アザゼルの霊体は綺麗に浄化されていった。


 サーシャと組んで三柱目だが、だんだん慣れて来て、侯爵級でも一分で浄化してしまった。俺たち、強すぎるんじゃないか?


『レベルが21095になりました。スケルトンダークヒーローに進化しました。闇勇者として死神の祝福を受けました。ダークレベルが30000になりました。ダークシールの魔法を覚えました。ダークテイムの魔法を覚えました。流転、医学、薬学、催眠、熟慮、望遠、服飾のスキルを取得しました』


『従者リズのレベルが21095になりました。闇勇者の使徒になりました。オープンの魔法を覚えました』


『従者アリサのレベルが21095になりました。闇勇者の使徒になりました。イクスプロージョンの魔法を覚えました』


『従者サーシャのレベルが21095になりました。闇勇者の使徒になりました。インカネーションの魔法を覚えました』


(闇勇者? ダークシール? 思ってたのと違うんだが……)


 果たして、これで、アネモネが考えを変えてくれるのだろうか。


(どうするかな。「闇勇者」だなんて、「闇医者」みたいで印象悪すぎだ。アネモネにはやっぱり会えないかなあ。「流転」のスキルも全員に行き渡ったし、俺たちだけでやってみるか?)


―― データ

 名前:ボーン

 種族:スケルトンダークヒーロー レベル 21095

 魔法:忍術S、死霊S、闇勇者S

    マップ、フレア、デス、ホラー、

    イリュージョン、デュアル、チャーム、

    シャドウ、アトム、ダークシール、

    ダークテイム

 技能スキル:無痛、復活、剣技、拳闘、迷彩、

    跳躍、俊足、無音、索敵、集音、

    投擲、解錠、裁縫、刀技、忍術、

    変態、触覚、毒針、複眼、操糸、

    蛍光、営巣、蜜蝋、集蜜、王乳、

    石人、水筒、槍術、算術、算盤、

    計算、記憶、簿記、睡眠、交渉、

    行商、販売、仕入、説得、契約、

    商魂、授与、天使、魔典、予知、

    憑依、使徒、蟲使、魅惑、変装、

    舞踊、演奏、離脱、分裂、修復、

    複製、死霊、掃除、洗濯、料理、

    鑑定、読唇、催眠、書道、変身、

    偽装、化粧、建築、植木、脱走、

    投石、水泳、潜水、節税、護衛、

    警備、御者、乗馬、格納、指揮、

    教育、育児、論説、秘書、工芸、

    鍛冶、書記、司書、怪力、管理、

    整理、整頓、支配、語学、霊視、

    霊感、傀儡、掘削、流転、医学、

    薬学、催眠、熟慮、望遠、服飾

  加護:死神の祝福 ダークレベル30000

  経過日数:75

  従者:リズ、アリサ、サーシャ

  使徒:リズ、アリサ、サーシャ


  リズ   従者レベル21095

       闇勇者の使徒

       心霊S

       レセプト、ハウント、サモン、

       オーラ、スティール、プロキシー、

       プレディクト、オープン

       霊感、睡眠、偽装、鑑定、格納

       化粧、変身、語学、魅惑、霊視、

       射撃、剣技、拳闘、流転


  アリサ  従者レベル21095

       闇勇者の使徒

       時空S

       ライト、プラズマ、グラビティ、

       メテオ、ストップ、ディメンション、

       ムーブ、イクスプロージョン

       算術、記憶、魔王、偽装、鑑定、

       格納、化粧、変身、魅惑、支配、

       傀儡、縄技、絞技、暗殺、流転


  サーシャ 従者レベル21095

       闇勇者の使徒

       治癒S、神聖S、守備S

       キュア、クリーン、デトクス、

       オラクル、ガード、ホーリー、

       パニッシュ、インカネーション

       霊視、隠密、怪力、偽装、鑑定、

       格納、化粧、変身、魅惑、霊感、

       拳闘、剣技、射撃、縄技、絞技、

       流転

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