幕間 国王と教皇

 王都の宮殿の密室で、国王ジョージと教皇クラリスが密談をしていた。


 教皇クラリスは五十代半ばで、白髪混じりの頭髪に優しげなエメラルドグリーンの瞳のイケオジだ。


 一方の国王ジョージは、まだ二十代半ばの金髪碧眼の品のいい貴公子然とした佇まいの美青年だ。


 教皇は教会の情報部から得た聖魔女の指示を直接国王に伝えるために来ていた。


 教皇から話を始めた。


「こたびのミントでの奴隷商人の大量殺人についてですが、聖魔女様から犯人はスケルトンとの情報を頂きました」


「スケルトン? クイーンか?」


「いいえ。騎士団が遭遇した黒いスケルトンだそうです」


「あの変態ロリコンスケルトンか」


「ミントの聖女が遭遇したスケルトンと同一個体だったとは聞いておりますが、変態……なのですか?」


「男の冒険者の場合は、心臓を一突きかデスであっさりと殺しているが、女の場合は、頸動脈を切ったり、燃やしたりして、楽しんで殺している。そのうえ、三人の少女を生きたまま棺桶に入れて、連れ回していたらしいのだ」


「何という……。もしや、聖魔女様が探すなとおっしゃった少女たちですか」


「そうだ。筆舌に尽くし難い体験をしたであろうから放っておけ、との仰せだ。聖魔女様はお優しいな。して、我々にどうせよとのご指示か?」


「私ども教会には、ミントに聖女隊を派遣して待機させよと。陛下には騎士団をそのままミントに待機させよと」


「期間は?」


「二週間でございます。二週間後にまた新たなご指示をお出しになる予定です」


「スケルトンクイーンの捜索はどうすればいい? 悪魔たちの動きを見る限り、王都に潜んでいるのは間違いない。騎士団を戻して捜索に当たらせるつもりだったが」


「しばし捨ておけ、とのご指示です」


「了解した。聖魔女様はいつお戻りになられるのか」


「もうすぐ目的を達せられるそうですので、それが終わればお戻りになるかと」


「旧帝国地区でのレジスタンスの動きが活発化している。それと、エルフ、ドワーフどもの抵抗にも手を焼いている。早くお戻り頂きたいものだ」


 王国は十年前に帝国、教国、聖公国の三国を制圧し、四つの国に別れていた大陸の統一を成し遂げている。


 その勢いで、海の向こうのエルフの住む森林大陸の国々とドワーフの住む鉱山大陸の国々をここ数年の間に次々と植民地化していた。


 これら王国の躍進は聖魔女の指導のもとに成し遂げて来たのであった。


「教会も君主級アンデッドの封印が急務でして」


「旧帝国領の冥界王、旧教国領の吸血女王、旧聖公国領の死魂王だったか?」


「ええ、よくご存知で。その他、植民地にも数体いるのです」


「浄化不能のアンデッドか。クイーンもどうやらそうなのだろう? ここ百年は人類が戦争に明け暮れて来たからな。アンデッドも力を増すということか。だが、アンデッド封印のための勇者の召喚には失敗したと聞いたが」


「ええ、それもよくご存知で。教会での最高機密事項なのですが。漏洩ルートを知りたいものです。それで次の勇者の召喚は百年待たねばならず、聖女隊の増強が必要でして、聖魔女様にご助力頂きたいのです」


「お互い問題が山積みだな。悪魔の動きはどうなのだ?」


「悪魔はスケルトンクイーンと敵対しているうちは放置でいいでしょう。人間に災いをなす悪魔は逐次退治していますが、太古より悪魔と人間はある意味共存共生ですので」


「まあ、そうだな。とりあえず騎士団にはミント滞在の延期を申し付けよう」


「そうして頂ければ。それでは、王国のために」


「王国のために」

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