第20話 ダンジョン最下層

 俺は霊体で、骨格は霊体の俺が操っている人形でしかない。


 だから、骨格の方を叩かれても潰されても全く痛くないし、骨格がどういう状態であっても、魔法を撃てる。魔法を放っているのは霊体の方だからだ。


 そして、骨格と霊体は五メートルぐらいまでなら離すことが出来る。侍と忍者との戦いでヒントを得て以来、俺は骨格から霊体を離して戦っている。これを普通の状態にしたいと考えているからだ。


 そうすることで、万一、浄化魔法などの霊体に有効な攻撃が行われても、それが骨格の方に向けられ、霊体に当たらないように出来ると考えたからだ。


 いつかは聖女と対峙する時が来る。そのときのために出来る限りのことをしておかなくてはならない。俺が負けたら、子供たちは路頭に迷ってしまうからだ。


 今、俺は数百の蜂から攻撃を受けていた。


(攻撃をしてきたのはお前たちだからな。燃やすぞ)


 俺は家ほどの大きさのある蜂の巣に向かって、フレアを放った。


 蜂からすると阿鼻叫喚の地獄図だが、攻撃して来たお前らが悪い。


『レベルが489になりました。営巣、蜜蝋、集蜜、王乳のスキルを取得しました』


『従者リズのレベルが486になりました』


『従者アリサのレベルが486になりました』


『従者サーシャのレベルが486になりました』


(すごいレベルアップだ。蜂の巣美味しいな。しかし、俺、魔法覚えなくなったなあ)


 昆虫はアホすぎで、戦いが一方的で、もはや作業になってしまっている。俺はもう少し潜ることにした。


(リズ、俺は今から地下七階に行く)


 リズはレセプトの魔法で、遠隔からでも俺の思念をキャッチできる。子供たちに心配させないように伝言を残した。


 今までのパターンだと地下七階も昆虫だが、地下七階全部がアリの巣になっていた。


 出て来るのは20センチ以上もあるバカでかいアリばかり。数匹殺したが、もうレベルが上がらなくなった。


 クイーンはどこでレベリングしたのだろうか。


(リズ、地下八階に行ってみる)


 随時伝言は残しておくべきだろう。


 少し歩くと、落とし穴を見つけたので、落下してみた。思った以上に落とし穴が深く、地面に叩きつけられ、骨がバラバラになった。


 復活するまで辺りを観察してみた。かなり天井が高い。広々とした地下の空間で、ところどころに岩の柱があり、壁も岩で出来ている。地面は土だが、そこかしらに石がゴロゴロしている。


(あれ? ここ地下九階だ。あ、なるほど)


 俺が落ちたのは、地下八階と地下九階を貫く吹き抜けだった。地下八階のフロアが高いところに見えた。


「何だ、またスケルトンか」


(え?)


 振り向くと、3メートルはあると思われる石の巨人が立っていた。


(あれ? 鑑定が効かない)


「いざ、参るぞ」


 風を感じたと思ったら、骨格が数十メートルも吹っ飛ばされて、バラバラになって散らばってしまった。霊体もつられて移動したが、ダメージはない。


(負けないことは確定でいいよな)


 だが、あれをどうやって倒すのだ。


(ちょっと待てよ。またスケルトンっていったな。クイーンもこいつと戦っているのか)


 復活してすぐに、俺は一目散に逃げ出した。


「あ、こいつ、逃げるなっ」


 石の巨人もこれには面食らったようだ。少し虚をつかれたようだが、その後、慌てて追いかけて来た。


 だが、さすがに俊足の俺には追いつけないようで、諦めてくれたようだ。


(とりあえず、地下八階に戻ろう)


 俺は走りながら、階段を探した。しかし、ようやく見つけた階段の前には、別の巨人がいた。


 その後も走り回り、いくつか地下八階への階段を見つけたが、すべての階段を石の巨人が守っていた。


 どうやら俺は、地下九階から逃してはもらえないようだ。

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