幕間 冒険者組合
冒険者組合は最近よく発生しているダンジョンでの組合員の殺害事件の調査に乗り出していた。ミント支部のギルドマスターのカイエンは、秘書のレイラが持って来た報告書に目を通していた。
ギルドマスター室にはカイエンとレイラの二人きりだった。
「男は胸を一突きか。女の犠牲者は一人だが、頚動脈を切られている。王都から来た手練れの二人は原因不明か。犯人は冷酷で容赦ないな」
次々に発生する殺人事件のため、ダンジョンへの新たな立ち入りは、現在組合が禁止しているが、孤児院のバックである教会から解禁圧力がかかって来ていた。
「孤児院もクソだな」
「どうしてですか? 孤児たちの働き場所を奪われてしまったという主張ですので、当然かと思いましたが、ひょっとしてあの噂は本当ですか?」
「どの噂だ?」
「孤児院の奴隷商との闇取引ですよ。見目麗しい未成年の子供をダンジョンに働かせに行って、奴隷商の息のかかった冒険者がさらっているという噂です」
未成年の奴隷売買は禁じられているため、ダンジョンが裏取引の場に利用されていた。
「圧力はそっちの取引が出来なくなるからに決まっている。袋に入れれば、ビーストだか子供だか分かりゃしないからな。堂々とさらって奴隷売買できるってもんさ。孤児が行方不明になっても、孤児院が何も言わないのがその証拠さ」
「サーシャ・ベネディクトの捜索依頼が来てますが」
「ああ、彼女の件は奴隷商とは別件だ。サーシャはプライム孤児院だから」
「ああ、貴族向け専門の」
「サーシャはすごい美少女らしい。サーシャを予約していたエロ貴族がダンジョンを解禁しろと圧力をかけてきている」
「貴族もダンジョンを使って、奴隷の青田刈りをしているのですか?」
「いや、今まではそういうことはなかった。プライム孤児院が貴族の圧力に負けたんだろう。エロ貴族は侯爵様だからな」
「それで、どうされます?」
「解禁しかないだろう。俺が踏ん張っても、すぐに首になって、別のギルマスが派遣されて来て、どうせ解禁される。それに、王都から騎士団が派遣されるんだ。教会もしばらくは様子見だろう。俺が出来るのはここまでだ」
「ギルマスのそういうところ、好きです」
「ん? どういうところだ?」
「もう、皆まで言わせないでください」
(それはきれいな女が言うセリフだろう……)
カイエンはげんなりした。
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