第11話 冒険者狩り
(何だ、ここは?)
学校の体育館ぐらいの広さで、地下二階から地上まで吹き抜けになっていた。天井があるが、丸い天窓が数ヶ所あり、陽の光が入って来ている。
下は土の地面になっていて、中央には何と小川が流れており、非常に清々しく、涼しげな感じがする。
地下一階と二階にマップで行けない空間があることには気づいていたが、人間たちはダンジョンの柱だと言っていた。まさかこんな空間があったとは。
「おじさん、ここから出られないみたい」
(何だと?)
左右両側の壁にはずらりと扉が並んでいるが、リズは扉を開けられないようだ。試しに俺は近くの扉を開けてみた。
(あれ? 開けられる)
俺はリズを手招きした。リズが扉を開けようとしても開かないが、俺と手を繋いだ状態であれば、彼女も扉を開けることが出来た。
「こんな場所があるなんて、誰も知らないです」
(どうやら、アンデッドと一緒にしか入れない場所のようだな)
色々調べて分かったのだが、スケルトンのいない部屋の壁をアンデッドと一緒であれば通過することができ、この空間に辿り着くことが出来るようだ。
以前見たスケルトンクイーンは、この空間を使って自由にダンジョン内を行き来していたと思われた。
(クイーンはあれ以来見ていないが……)
人は長い間日に当たらないとまずいはずなので、このような場所があるのは助かった。鑑定したところ、小川の水も飲める。となると、次は食料の確保だ。
(リズ、食料を狩って来るから待っていてくれるか)
「おじさん、私も行っちゃダメですか?」
(リズがいるとデスという魔法が使えないんだ)
リズがガッカリした表情になる。子供は素直に表情に出すからかなわない。
(だが、よく考えると、俺に何かあったとき、リズはここから出られなくなるな。仕方ない。一緒に行くか)
リズの表情がぱあっと明るくなった。
「はい、よろしくお願いします!」
(俺はイリュージョンで女に化けた方がいいか?)
リズが何か考え込んでいる。
「あの、おじさん。私、考えたんですけど、私が一人で歩いていると、人さらいが引っかかりませんか?」
(囮になるっていうのか?)
「はい。悪い冒険者は一部なのです」
本当かなあ。あんな高校生みたいのが、何の罪悪感もなく、人さらいしたぞ。孤児の人権とかまるで考えていないんじゃないか。
そう思ったが、リズの気持ちを汲んでやることにした。
(分かった。スケルトンのままで行こう。リズに悪さするヤツは殺すけど大丈夫か?)
「はい。そういうのは見慣れてますから」
厳しい世界に生きて来たんだな。俺はリズに対して、同情と感心が入り混じった気持ちになった。
俺とリズは地下三階へと降りることにした。ビーストであれば、基本的に何でも食べられるらしい。
地下二階の廊下に出て、三階への落とし穴に向かっていると、前から三人の冒険者が歩いて来るのを検知した。
俺はリズを先に歩かせて、五メートル後ろを歩いた。瞬足で一気に間合いを詰められる距離だ。
冒険者はランタンをかかげながら歩いて来た。先頭は二十代後半の意地悪顔の女、後ろは気の弱そうな男二人だ。女が顔に似合わず「裁縫」というスキルを持っていた。
「あら、子供が一人でダンジョン歩いてたら、誘拐されちゃうわよ。不用心ね。仲間はいないの?」
「います」
女はリズの言葉を嘘だと思ったようだ。
「ふん、嘘なんかついて。なるほどね。お嬢ちゃん、将来はキレイになりそうね。お前たち、子供を縛るのよ」
(おい、出てすぐこれか。まるで人さらいホイホイだな)
俺はイリュージョンでグラビアアイドルに化けて、瞬足で一気にリズと女の間に立った。
「あ、本当に仲間?」
女が間抜けな声を出したが、俺は構わず女の首筋を切った。女が驚いた顔のまま血しぶきを飛び散らせながら倒れて行く。
『裁縫のスキルを取得しました』
そして、俺は腰を抜かしている男たちを剣で一人ずつ刺して行った。
(俺ってば、容赦ねえな。日本の娘が見たらびっくりするだろうな)
俺はステータスを確認した。
名前:ボーン
種族:スケルトンメイジ レベル86
魔法:マップ、フレア、デス、ホラー、
イリュージョン
迷彩、跳躍、俊足、無音、索敵、
集音、投擲、解錠、裁縫
経過日数:36
リズの方を見ると真っ青な顔をして震えていた。
(全然慣れてないじゃないか……。そういや、娘もすぐバレる嘘ついてたよなあ)
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