第7話 スキルの取得

 地下三階に慎重に降りたおかげで、体はバラバラにならずに済んだ。俺は周囲を見回して驚いた。


 このフロアは今までとはずいぶん違っていた。全体的にわずかに明るく薄暗い。廊下は獣道のようになっていて、両側の各部屋の間取りが、地下一階や二階のスケルトン部屋の数倍はあり、天井も高く、入り口が草や木で覆われていた。


 早速手近な部屋の入口の草をかき分けて入ってみたところ、角の生えたシマウマのような馬が襲って来た。


 俺は鑑定する暇もなく、慌ててデスを放った。シマウマは、呆気なく倒れた。


『レベルが71になりましした。迷彩のスキルを取得しました』


(あー、びっくりしたぁ。いきなり襲いかかって来るとはな。でも、動物からもスキルを得られるのか。すごいな)


  名前:ボーン

  種族:スケルトンメイジ レベル71

  魔法:マップ、フィア、フレア、デス

  技能スキル:無痛、復活、剣技、拳闘、鑑定、

     迷彩

  経過日数:31


 死んじゃった動物はどうすればいいんだろうか。人間の死体は放置だが、動物は食べてあげないといけないような気分になるから不思議だ。


(でも、俺、何も食べないし)


 仕方がないのでイッカクゼブラ(遺体を鑑定して名前が判明)は放置した。


(あ、骨の色がっ!)


 俺の骨の色が、周囲に溶け込むかのような漆黒色に変わっていた。スキル「迷彩」の効果に違いない。


(「漆黒のスケルトン」って、カッコよくね? それに、これ、俺ってほとんど見えないんじゃ……)


 次の部屋に入ると、耳の長いカンガルーのような動物がいた。音に反応してこちらの方を見ているが、案の定、俺のことは見えていないようだ。


 俺は今度は落ち着いて、まずは鑑定してみた。


 ラビットワラビー レベル58

 スキル 跳躍


 デスを放つと、ラビットワラビーは死んでしまった。


『レベルが73になりました。跳躍のスキルを取得しました』


(簡単すぎるだろ。こんなんでいいのか?)


「跳躍」のスキルを取得したので、軽く跳んでみたところ、ものすごい勢いで天井に激突し、骨がバラバラになってしまった。


 俺は力をつけて行く自分に興奮した。


(すげえ。動物のスキル、取りまくれるんじゃないか?)


 思った通りだった。俺は人間のおっさんたちのことはすっかり忘れて、次々に部屋に入り、片っ端から動物をデスで殺しまくった。動物愛護団体が見たら卒倒間違いなしだ。


 せっせと動物を狩った結果、俺の今のステータスはこうなっていた。


  名前:ボーン

  種族:スケルトンメイジ レベル80

  魔法:マップ、フレア、デス、ホラー

  技能スキル:無痛、復活、剣技、拳闘、鑑定、

     迷彩、跳躍、俊足、無音、索敵、

     集音

  経過日数:32


 ホラーはフィアの上位魔法で、フィアは吸収された。より恐怖が強く刻み込まれるようで、混乱、麻痺などのバッドステータスを引き起こし、それがフィアよりも長続きする。動物にもよく効くが、このフロアはデスだけで十分だった。


 「無音」のスキルで、歩くときに出ていたかすかな音もしなくなり、ますます気づかれにくくなった。俺は息もしないし、無臭のため、動物は俺に全く気付けないようだ。


 だが、さすがにスキル欲しさに、動物を殺しまくったのは、気分がよくなかった。象牙のために象を殺したり、毛皮のためにミンクを殺したりする自分勝手な密猟者と同じだと気づいたからだ。


(ちゃんとスキルを有効活用するから。お前たちは俺の中で永遠に生きるから)


 俺はそう思うことにした。そこで俺はふと気づいた。何だか俺は少しおかしい。動物を殺すことには罪悪感を感じるのに、人間に対しては全く感じないのだ。


(まあ、いいか。深く考えるのはよそう)


 ちなみに、「索敵」というスキルも優れもので、自分よりもレベルの低い敵が大体どこにいるのかを把握できる。そのおかげで、見失っていたおっさん二人も簡単に見つけることが出来たのだが、それよりも気になるチームを見つけた。


 それは、中学生ぐらいの子供たちだけのチームだった。

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