第6話 クイーンは謎だった
(マジか。あれをくらったらおしまいだな)
どうしようかと悩んでいたところ、部屋の中にさっきのスケルトンが現れた。
なぜ分かるかというと、俺はスケルトンの個体の区別がついてしまうのだ。全く自慢にならないが。
(あれを受けても復活するのか。スケルトンすげえ。ん? レベルが1になっている。ホームポイントで復活するが、レベルがリセットさせるってこと?)
あの聖女はべらぼうに強いが、部下を二人も殺されているし、俺には逃げられている。あまり頭の方は優秀ではないのではないか。なんというか、色々と抜けている女のように思う。
(今ので俺を葬ったと思ってくれたらいいが……)
俺が都合のいいことを考えていたら、白銀の鎧を身につけた骸骨騎士が突然部屋に入って来た。
(昨日の女スケルトン!)
鎧から見える顔で、昨日の女スケルトンだと俺にはわかった。
(スケルトンクイーン? レベル1、あ、消えた)
鑑定で情報が取れなくなってしまった。同タイミングで、ざわっとした悪寒が走る。どうやら相手も俺の情報をのぞいているということのようだが、俺には抵抗の仕方が分からない。
クイーンの鎧をよく観察してみると、胸の辺りが膨らんでいて、女っぽい形をしている。クイーンは俺をじっと見ていたが、ダメって感じで首を振り、よく西洋人がする肩をすくめる動作をした。
(外人かっ!?)
そして、クイーンはそのまま立ち去ってしまった。
俺はすぐに廊下に出て、クイーンを追ったのだが、どこに行ったのか、姿が見えない。手当たり次第に近くの部屋をのぞいたが、結局、クイーンを見つけることは出来なかった。
(いったいどこに消えたんだ?)
クイーンを探し回って分かったことがある。このフロアには部屋が沢山あり、そのうちの半分ぐらいにスケルトンが一体配置されている。レベルは全て5だった。
ダンジョンの入り口近くはまだ聖女がいるかもしれないので、怖くて近づけなかった。さっきから入り口から出来るだけ離れようとしている。
しかし、聖女のやつら、アンデッドってだけで、問答無用で殺しにくるのは如何なものか。まるでゴキブリ扱いだ。
(そっちがその気なら、こっちも殺してやるからな)
と言いつつ、聖女が怖くて、ビビって逃げ回っているのだが。
ちなみに鑑定のスキルはなかなか便利で、このダンジョンはミントという名前で、ここは地下一階らしい。ってことは、地下二階もあるのだろうが、行き方が分からない。マップの魔法は通って来たところだけ地図として表示されるようだ。
俺はいいことを思いついた。ダンジョンを熟知している人間の冒険者の後をつければいい。そう決めて、足音に耳をすませた。今までの経験で、人間の冒険者は一日五組ぐらいがダンジョンに入って来る。
(足音しないな。下が土だから無理かな)
俺は足音を拾うことは早々に諦めて、ダンジョンの探索を再開した。そして、しばらくして、落とし穴に落ちてしまった。
床だと思っていたら幻影だった。階段があると思っていたらなかったときのずっこけ具合で、俺は地下二階へと転落した。
落ちたときの衝撃で、いったんバラバラになってしまったが、すぐに復活した。辺りを見回すと、地下一階と同じように廊下と部屋で構成されている。最初に目にした部屋に入ってみた。スケルトンがいた。
(またスケルトン? レベル10だけど。これ、ゲームだとしたら、つまらなさすぎるぞ)
部屋から出たとき、少し遠くの方に灯りが見えた。今まで気づかなかったが、地下二階は一階とは違って真っ暗なようで、人間には灯りが必要なのだろう。俺は真っ暗でも普通に見える。
俺は灯りを追って進んで行った。何ヶ所か落とし穴があったが、あるかもしれないと分かっていれば回避できる。
そして、灯りの持ち主を視認できるところまで近づいた。やはり人間の冒険者だった。
何だか頭の悪そうな中年男の二人組だ。
(鑑定して気づかれたら殺せばいいか)
そう思って、鑑定してみた。人の命をなんだと思ってるんだと非難されそうだが、何とも思っていないのだから仕方がない。特におっさんとかどうでもいい。
人間 レベル32
魔法 ファイア、サンダー
スキル 投擲
人間 レベル35
魔法 キュア
スキル 解錠
(どうせなら、小汚いおっさん二人の尾行ではなく、いい匂いのする華やかな女子チームを尾行したいなあ。そんなのいないけど)
おっさん二人と十分に距離をとって尾行を始めたところ、二人はすぐに「うおっ」という声とともに落とし穴に落ちた。
(……。くっそ間抜けなおっさんどもめ、頭くるなあ)
俺は少し時間を置いてから、慎重におっさんたちの落ちた穴に入って行った。
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