第8話 孤児院の冒険者たち

 子供たちだけのチームに出会ってから数日経った。


 こいつらは孤児たちだ。兄貴分のロキ、お姉さん役のリズ、弟分のビート、妹分のチェキの四人組だ。見た目は中学生だが、ひょっとするとチェキはもう少し下かもしれない。


 孤児院では11歳以上は働きに出ないといけないらしい。11歳といえば、日本にいた娘と同い年だが、俺の娘は働くなんて感じでは全くなかった。


 俺には親の気持ちがしっかりと残っていて、子供たちだけで行動しているこいつらが心配で、ずっと見守っていたのだが、それも明日までだ。ノルマの薬草の採取がほぼ完了したらしく、明日、孤児院に帰るようだ。


 この数日の間に、こいつらや他の冒険者たちの会話から、さまざまな情報を入手することが出来た。「集音」のスキルで、かなり離れていても会話が聞き取れるようになったからだ。


 このフロアの各部屋にいるのは、動物ではなく、動物に霊が憑依した「ビースト」という魔物だということがわかったし、そのために、このフロアは冒険者の間では「ビーストフロア」と呼ばれていることも知った。


 また、人間は敵を倒してもスキルが増えないことも知ることができた。人間にとってスキルとは、生まれたときから持っているか、鍛錬して身につけるものらしい。


(まあ、普通はそうだな)


 殺した敵のスキルを奪えるなんてかなりチートだとは思うが、それでも、最強になる気がまるでしない。聖女を見てしまっているからだ。


(あれに勝つイメージが全く湧かないんだが……)


 もはやトラウマとなっている聖女の放った青白い光線を思い出していると、不審な男二人組を検知した。


 あの中年男二人組だった。ずっと近くでウロウロしているので不審に思っていたのだが、ついに行動に出るようだ。ロキたちのいる部屋にゆっくりと近づいている。何が目的か分からないが、子供を狙うとはとんでもない奴らだ。


 ロキたちは眠るときには、交代で部屋の入り口に見張りを立てている。今の見張りはビートだが、部屋の入り口に寄っかかって、すでにこっくりし始めていた。


 おっさん二人組は、ビートが寝てしまったと判断して、行動を開始した。


 何をするのか泳がせて見ていたら、二人はロキたちのいる部屋に入ろうとしている。おっさんたちがレベル30台に対して、ロキたちのレベルは10そこそこだ。とても敵わないだろう。 


 デスはビートを巻きこむ恐れがあるため、俺は「瞬足」で彼らに一瞬で近づき、二人の正面に立ってからホラーをかけた。二人の顔が恐怖に歪み、動きが止まる。叫び声を出される前に、俺は二人の剣を抜いて、心臓に突き刺した。


『レベルが85になりました。投擲、解錠のスキルを取得しました』


 俺は遺体を担いで早々に立ち去ろうとしたのだが、ビートが目を覚ましていて、目を見開いて、俺を凝視している。どうやらビートに一部始終を見られてしまったようだ。


 だが、俺は構わずその場を立ち去り、姿を消した。どうせビートの言うことは、誰も信じやしないだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る