第3話 レベルアップ
翌日、リードが再びキャシーを連れて来た。
俺は反射的にキャシーに襲いかかる。そして、すぐにリードに斬られて転がった。
リードが首を傾げた。
「あれ? おかしいな。昨日、別の部屋からもう一体スケルトンを持って来たんだが」
「リードさん、まずは一体で練習してみたいです」
(何だかこの前よりも二人の仲がいいじゃないか。気に食わねえな)
「もう一度、取りに行っていいか?」
「え? 一人にしないで下さい」
「そうだな。じゃあ、ついて来てくれ。この近くの部屋にも、もう一体スケルトンが出るんだよ」
リードたちはいったん俺の部屋を出て行った。
俺はまた女スケルトンに会えると期待した。
しばらくして、リードたちが戻って来た。俺は愚直に襲いかかることを止められない。今度はキャシーにぶん殴られて転がった。
「キャシー、やるじゃないか」
「スケルトンって、本当に雑魚キャラですね。毎回動きが同じでワンパターンです」
(ちくしょう。好きでワンパターンやってるんじゃねえ。それで、女スケルトンは連れてこなかったのか?)
「しかし、あっちのスケルトンはどうなってんだ? 頭しかなかったな」
「死んじゃったんですかね」
「おい、スケルトンはそもそも死んでるぞ」
「そうでした」
リードとキャシーは大笑いしている。
(くそう、何が面白いんだよっ)
俺は復活して、襲いかかるが、リードとキャシーの二人に呆気なくやられた。
「このスケルトン、あっちの部屋に持って行ってみようか?」
「え? これを持つんですか? 気味が悪いです」
「俺が持つから大丈夫だよ。一分以内に移動しないと復活するから、意外と難しいんだぜ」
そう言ってリードは袋からブランケットを出して来て、部屋に広げ始めた。
その作業を見守っていたキャシーが、俺が復活したタイミングで、ブランケットの方に殴り飛ばした。リードが俺一体分の骨をブランケットにくるめて鞄に入れ、急いで部屋を出た。
部屋を出るときに膜のようなものを通過した感触があった。俺がどうしても出られなかった膜に違いない。俺は興奮した。
(やった、出られた!)
その後、俺は廊下を出た先の部屋でばら撒かれた。すぐに復活して、キャシーに襲いかかる。
しかし、今回は俺の意思でわざとそう動いた。驚いたことに、自分の意思で動けるのだ。だが、考える時間が欲しかったので、あえていつものように行動したのだ。
俺はキャシーにぶん殴られて、リードの方に転がった。
「ちゃんと復活するよな。おかしいな。こっちのスケルトンはどうしちゃったんだろう」
リードが剣で頭蓋骨を突ついて転がしている。俺は気づいた。
(あれは単なる人骨だ。スケルトンではない。リードのやつ、俺を全く警戒していない。キャシーはリードばかり見て、盛りのついた猫か、お前は。よしっ、やるぞ)
俺は復活して、素早い動きでキャシーから剣を奪い、リードの背中に思いっきり突き立てた。リードはそのままぐったりと膝をつき、前のめりに倒れた。
(ははは、首のない俺と同じ動きじゃないか。呆気ねえな)
『レベルが25になりました。ファイアの魔法を覚えました。剣技のスキルを取得しました』
(やはり、レベルが上がった!)
「きゃああああ」
一瞬固まっていたキャシーが我に返り、半狂乱になって叫びながら、部屋の外に逃げ出していく。俺はキャシーを追った。こっちの部屋は簡単に出ることが出来た。キャシーは足をもつれさせながら、ダンジョンの出口の方に向かって逃げて行く。
(逃すかっ、クソ女っ)
キャシーはダンジョンの出口への梯子を必死になって登っている。
(そうだ、魔法っ)
俺はファイアの魔法を使用した。赤い火の玉がキャシーに向かって一直線に飛んでいき、キャシーの背中に見事命中した。キャシーは悲鳴を上げ、火だるまになりながら、梯子から落下した。かなりの高度からだったからか、キャシーはぴくりともせず、床の上で燃えている。
(人ってあんなに燃えるのか)
『レベルが33になりました。フィアの魔法を覚えました』
(リードのときの方がレベルの上がりは大きかったな。しかし、俺って、人を殺しても何とも思わないんだな)
俺はまだ燃えているキャシーに近づいて行った。
(こりゃあ、手持ちのアイテムも全部燃えてるな)
燃えているキャシーをそのまま放置して、俺はダンジョンの外に出ようと梯子に手をかけた。だが、登ろうとしても、強力な重力がかかり、梯子を登ることが出来なかった。
(今度はダンジョンから出られないのか。何なんだよ、この世界は)
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