第2話 女スケルトンとの遭遇

 あのリードというニヤけた優男は、若い女を連れて来ては、俺を練習台にしてボコって行く。


 これまでの会話から推測すると、リードは新人冒険者のトレーナー資格を持っているようだ。


 連れて来る新人がどういうわけかいつも若い女だが、全く羨ましくない。容姿がイケていない女ばかりだからだ。


(いい女がわざわざ冒険者する必要なんてないわな。キャシーってのも、パッとしなかったな)


 普通の冒険者は俺の部屋の前を素通りして行き、滅多にここには入ってこない。宝箱も何もなく、俺が出現するだけだからだ。


(まずはここからどうにかして出たい。ん? またリードの奴か?)


 思った通りリードだったが、いつものように女連れではなく、今回は一人だった。


 俺は部屋に一人でいるときには、自分の意志で動けるのだが、冒険者に対しては、自分の意思ではなく、反射行動で襲いかかるように出来ているみたいだ。スケルトンの習性なのだと思う。


 今回もお約束どおり、反射的にリードにのろのろと襲いかかり、呆気なく首を飛ばされた。


 首が転がっても、目は回らない。スケルトンには目がないからだと思う。どうやって見えているのかはさっぱり分からないが、リードが大きな袋を持っているのが見えた。


(何を持って来たんだ?)


 リードは袋を開いて逆さにして、中のものを全部出した。白い骨がガラガラと地面に転がった。


 ばらばらに散らばった骨が震え出し、互いにくっついて一体のスケルトンとなったが、すぐにリードがスケルトンの首を刎ね飛ばした。


 そして、リードはそのまま部屋を出て行った。


 俺は倒れているスケルトンを見た。


(俺と少し形が違う。違う種類のスケルトンか?)


 俺の方が早く復活して、しばらくして倒れていたスケルトンも復活した。


 スケルトンに対しては、反射的な攻撃は起動しなかった。


(あれは生者に反応するアンデッドの本能なのかもな)


 俺は立ち上がったスケルトンをまじまじと観察した。


 骨盤が広がっていて、くびれを感じさせる体型で、俺よりも背が頭半分ほど低い。


(お、女!? 女体だったのかっ。裸どころか骨まで丸見えじゃんっ。て、骨に興奮してどうするんだよ、俺はっ)


 女スケルトンは周りをキョロキョロと見ている。俺に気づいて、しばらく俺をじっと見ていたが、俺が手を振っても反応せず、部屋を出て行こうとした。


 俺は慌てて女スケルトンの腕を取った。女スケルトンはしばらく取られた腕を見て、その後、俺を見た。


(意思がある? おわっ)


 俺は殴られて、頭蓋骨が首から外れた。


 女スケルトンは転がった俺の頭蓋骨をじっと見た後、部屋を出て行った。


(なんて乱暴な女なんだ。だが、知能のないアンデッドではなかった……)


 女スケルトンは考えて行動しているように見えた。行動に明確な意思を感じたのだ。


(この部屋から普通に出て行ったよな)


 この部屋から出られないのは、どうやら俺だけのようだ。


 ひょっとすると出られるようになったのかと思い、試しに俺も出てみようとしたが、やはり出られなかった。目に見えない膜のようなものがあり、それが体全体を押し戻すのだ。


(くそっ、やはり出られないか)


 その日は一ヶ月前に転生して来たときと同じように、あちこち色々なことを試してみたが、やはりどうしても部屋の外には出られなかった。


 だが、ひょんなことから、俺はここから出られるようになるのだった。

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