スケルトンに転生した。冒険者に倒され続ける毎日だったが、冒険者を倒すとレベルアップするんだな

もぐすけ

第一章 ダンジョン編

第1話 冒険者のサンドバッグ

 俺はスケルトンだ。


 ダンジョンに入ってすぐ左の部屋に住んでいる。というか、なぜかここから出られない。


 そんな俺の部屋に、今日もまた冒険者のリードの野郎が、若い女を連れてやって来た。


 俺は両手を広げて、のたのたと女の方に襲いかかる。まるで、斬ってくれと言わんばかりの遅い動きだ。


 リードの剣が俺の首を斬った。


 俺の頭蓋骨が女の足元に転がり、女が悲鳴をあげる。首のない俺の胴体は力無く膝をつき、前のめりに倒れた。


 リードが得意げな顔で女に説明し始めた。


「な、スケルトンは雑魚キャラだ。練習台としてはもってこいなんだ。一分後に復活するから、次はキャシー、君が斬るんだ」


(この女、キャシーというのか。体はいいが、顔が残念だな)


 だが、キャシーはビビっているのか手が震えて剣を持てない。リードがキャシーの後ろから抱えこむように両手を持ち、剣をしっかりと握らせた。キャシーが少し頬を赤らめた。


(ちっ、腹立つわ、コイツら)


 俺の頭蓋骨が首にくっついて復活し、再びキャシーにのたのたと襲いかかる。


「きゃあぁぁぁ」


 キャシーが悲鳴を上げながら、剣をめちゃくちゃに振り回して、俺をめった打ちにする。頭にクリーンヒットが一発入って、俺の頭蓋骨が横に吹っ飛んだ。


(バカみたいにぶっ叩きやがって。痛そうとか、可哀想とかないのかよ)


 スケルトンのこの体は、痛みを全く感じない。


「出来たじゃないか、キャシー、ほら、君がやったんだよ」


 リードが転がっている俺の頭蓋骨を指差した。


 キャシーは膝が震えて、汗びっしょりだが、表情は明るかった。


 汗に混じって女の臭いがして来た。


(ほんと、腹立つわ、こいつら)


「リードさん、怖くて夢中でしたけど、少し自信がつきました」


「よし、じゃあ、今日はここまでにしよう。恐怖ってのは思った以上に疲労が蓄積するんだよ」


「はい、また明日もリードさんをご指名しますっ」


「ありがとう。でも、他のトレーナーに教えてもらうと、また違った意見を聞けると思うよ」


「し、しばらくリードさんにお願いしたいですっ」


「はっはっは、それはありがたい。少し今日より難しくしておくよ」


(はっはっは、じゃねえよ)


 俺は復活したが、すぐにリードに斬られて転がった。


 二人は楽しく話しながら、俺の部屋から出て行った。


 ***


 一カ月だ。冒険者に一方的に殴られる生活が一カ月も続いている。


 俺はこの世界に転生して来た。


 どうやって転生したのか全く覚えていないが、転生する前は日本で暮らす四十五歳のおっさんだった。結婚していて、小学生の娘がいた。


 多分死んだのだろうが、気づいたら、こうなっていた。


 名前はボーンだ。ふざけているとしか思えない名前だ。


 なぜ自分の名前を知っているかというと、ステータスってのが見えるからだ。


 名前:ボーン

 種族:スケルトン レベル1

 魔法:マップ

 技能スキル:無痛、復活

 経過日数:30


 レベルがあるってことは、上げることが出来るはずだ。このクソ忌々しい冒険者たちをぶち殺したら、きっとレベルが上がるに違いない。


 そして、そのチャンスは意外と早くやって来た。

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