第4話 制服部隊に襲われた
俺はダンジョンを出るのを諦め、リードの遺体のある部屋に戻って、遺体を物色した。
財布、冒険者カード、トレーナー資格証明書、剣のほか、バックパックに水筒、着替え、飲み薬、ブランケット、ロープ、ナイフが入っていた。
(もらっておくか)
前から素っ裸でいる自分が嫌だったので、リードのズボンを脱がして、自分ではいてみた。
(うーん、なんか似合わない気がする)
スケルトンには普段着は似合わないことが分かった。
(鎧とかだったら、似合いそうだな。もうしばらく素っ裸で我慢するか)
荷物を背中に背負って、部屋を出ようとしたら、ダンジョンの入り口の方から話し声が聞こえて来た。キャシーの遺体を見つけて、冒険者たちが騒いでいるようだ。
「死んじゃってるぞ」
「うへえ、黒焦げだ」
「何でこんな入り口で殺されているんだ?」
「とにかく組合に連絡しよう」
部屋からそっと顔だけ出して、声のする方をのぞくと、新たな冒険者チームがダンジョンに入って来たようだった。若い三人組の男たちだ。
(殺すか?)
だが、リードやキャシーに対しては、憎悪と殺意があったが、彼らには何も感じなかった。
(「フィア」って魔法は恐怖って意味だよな。ちょっと使って見るか)
一人がダンジョンの外に出る梯子を登り始めた。下で待っている二人と合わせて、三人とも背中をこちらに向けている。俺は部屋をそっと出て、フィアの魔法を放ってみた。
登り始めた一人はビクッとなった後、何かを喚きながら、猛烈な勢いで梯子を登り始めた。下で待っていた二人は悲鳴をあげなから、頭を抱えてうずくまっている。
(へえ、ああなるのか)
しばらく見ていたが、一人は梯子を登り切り、二人はずっと震えているだけなので、だんだん飽きて来た。
(この状態でもう一度フィアをかけるとどうなるんだろう)
俺は再びフィアを放ったが、特に変化はなかった。俺は彼らに近づいて行った。自分の姿を見たときに、彼らがどう反応するのかを見たかったのだ。
だが、俺がすぐ側まで来ても、彼らはうずくまって震えているだけで、俺に気づかない。仕方がないので、一人の男の肩をトントンと叩いてみた。
肩を叩かれた男がビクッとして、俺の方を見た。
「ぎょわわああああ」
ものすごい声をあげて男が剣を振り回して来た。隣の男もその声で腰を抜かし、失禁までしているが、俺に向けて震える手で、瓶に入った水をかけた。
(熱っつうううう。あちちちっ。何だこの水は! やばい。骨が溶けて……)
俺は慌ててその場を逃げ出し、さっきの部屋に戻り、水筒の水を熱く感じるところ数カ所にかけた。
熱が引いて行き、骨の修復が始まり、俺はホッとした。今まで痛いという感覚がなかったので、熱いという感覚は非常に恐ろしいものに感じた。
冒険者がパニクっていたから、少しかかっただけで幸いだった。まともにかかっていたら、骨が溶けてなくなってしまうのではないだろうか。
(聖水かなんかか?)
少し落ち着いたので、再び部屋の外を見ると、まだ二人は喚いていたが、それとは別の戦闘服のような制服を着た男たち数人が、梯子を降りてダンジョンに入ってくるところだった。
(一、二、三、全部で五人か。おや?)
一人だけ白い制服の女が最後に入って来た。その女が恐怖で錯乱している冒険者に何か魔法をかけたようだ。冒険者たちが正気に戻り、女に何か話している。
冒険者の一人が俺の方を指さした。こちらを見た女が美人だったので、少し女の顔を見つめてしまった。慌てて顔を引いたが、女と目が合ったような気がする。
(まずい、まずい、まずい)
「この子たちを恐怖状態にしたのはスケルトンみたい。あの部屋に入ったって。見て来てくれるかなっ」
女の声はやたらと通った。女から指示されて、戦闘服の男と思われる足音が近づいて来る。
男の一人が警戒しながら部屋に入って来た。ガタイのいい筋肉男だ。
俺はフィアを放ったが、効果がなかったばかりか、俺の位置を知らせてしまったようで、男が俺にとびかかって来た。ファイアを放つが、男に直撃したのにシュっという音を立てて炎が消えてしまった。
俺は剣を男に突き出した。男は剣先を手で払って、俺のこめかみを拳で殴った。
頭が吹っ飛んで行き、俺の首から下の体は力なく崩れていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます