映画館でキャラメルを選ぶようになったよ

完結

キャラメルは甘ったるくて苦手だ。そういう理由で、映画館では消去法で塩を選んでいた。僕は当時付き合っていた彼女と2人で映画を見に行った。2人でスクリーンを見て座席を決めるのさえ楽しかった。彼女はスラッとしていて綺麗でそんな彼女がキャラメルを選んでいたのがなんか以外だった。「えー以外」「私ってどんなイメージなの」こんなやり取りをしたのを覚えている。1番後ろから3番目のLの11と12。暗い空間に隣同士に座るだけでドキドキする。映画館の中でコソコソ小さな声で話してる彼女が可愛くて可愛くて愛おしい。塩味のポップコーンを彼女の口にあげると「絶対こっちの方が美味しいよ」と言ってキャラメルの濃い部分を僕にくれた。なんだか彼女から貰った濃いめのキャラメルは美味しかった。映画が始まり少し時間が経って横を見た時彼女は寝ていた。また少し時間が経って横を見たら彼女は泣いていた。手で涙を拭いてあげた。心底可愛いなと思った。映画館を出た後、映画の感想を興奮しながら話す彼女は小さな子供のように無邪気でこんな喜んでくれるならまた行きたいなと思った。でもこの数ヶ月後に僕達は別れた。原因は価値観の違いだった。映画館に行くとキャラメル味を選ぶ事が増えた。だけどなんか違うんだよな。あの時、彼女から貰ってた濃いめのキャラメルとは。なんでだろう。キャラメル味を食べると君の事をちょっとだけ思い出すよ。