第9話
私がミーシャ先生を問い詰める決意をしている頃、模擬戦の相手はというと響から急に圧力が増したことにより額から汗を流していた。
「なあ、嬢ちゃん。俺なんか怒らせること言ったか?」
「???」
何を言っているのかが分からない響は首を傾げながら対戦相手を見た。ただし瞳孔が開いていたため相手はさらに委縮してしまったが。
一方そのころ、ミーシャ先生はというと。
「おう!。眼力と圧力でしょうか。それだけで相手の戦意を喪失させるなんて!響!!恐ろしい子」
なんて呟いていた。
そんなこんなで時間は押しているのだがなかなか試合を始めることのできない審判。彼は職務だと自分に言い聞かせながら試合を初めていいかを確認した。
後にこの審判はある一定の人から勇者として称えられることになるのだが、それは別の話だ。
両方の選手が試合の構えをとったことで審判が試合開始を合図する。
相手の2槍流?の男子は長槍と短槍を構えて私の出方をうかがっていた。
私はというと盾に身を隠して相手の死角をぬいながら麻痺毒を塗ったナイフを【念動力】で運ぶ。
しかし、あと一歩というところでナイフは短槍ではじかれてしまった。
「すまないが、これでも一応予選通過者の下調べはしているんだわ」
男子生徒はそういうと長槍の方を構えて盾へ一直線に突っ込んでくる。一方、響はというとナイフをあっさり防がれたことに動揺していた。
実戦経験の少ない響の手札はそれ相応に少ない。その中で響は盾を前面に押し出し突っ込む。いわゆるシールドバッシュで応対する。
長槍が折れる可能性が頭をよぎり、進路を変えて短槍で対応しようとしたのだが相手選手。しかし、そこにあったのは3本のナイフだった。
「あっ。やべっ」
これが男子生徒の最後の一言となり、ナイフは3本同時に男子生徒へ襲い掛かった。
ここで、審判が試合を止めて響の勝利となった。ちなみに仕掛けとしては簡単なことで響は盾を構えて突っ込んではおらず前方に向かって盾を滑らせていた。盾が倒れないように【念動力】で補助は行ったが日頃から鍛え上げた筋力による盾の投擲であり、【念動力】の出力はそこまであげていない。
そして、盾の影にナイフを隠しておいて攻防一体の響の策略にまんまと引っかかった男子生徒はナイフに塗られた麻痺毒の餌食となったのであった。
対戦を終えた響は、またもや観客席に急いで戻った。
そこには響の快勝を喜んでいるミーシャ先生が抱きついてきたのだが、その先生を迎えたのは響のアイアンクローだった。
「ミーシャ先生。私をダンジョンに行くように育てていません?」
響が怒気のこもった声で尋ねると、ミーシャ先生はなっていない口笛を吹きながらあさっての方向を見つめていた。
私はあきれながらも、模擬戦に快勝した事に心地よい感情を抱いていた。
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